以前は会えば何でも話せた二人の親友が、今は向かい合って座り、言葉もなく見つめ合っていた。
坂本加奈は少し気になっていたが、彼女と喧嘩するほどの怒りはなく、ただ一時的に何を言えばいいのか分からなかった。
結局、佐藤薫が先に口を開いた。かすれた声で低く言った。「加奈、私のことを怒って友達でいたくないなら、分かるわ。傷つけられたのはあなたで、騙されたのもあなた。私を叱りたいなら、叩きたいなら、それも構わない。私は絶対に反撃しないから」
「えっ!」坂本加奈は口を開いたまま、呆然とした表情を浮かべた。「私...私は絶交しに来たわけじゃないよ」
佐藤薫の充血した目には驚きが満ちていた。「加奈、あなた...」
「あの夜、知った時は本当に怒ったけど、でも絶交なんて考えてなかったよ。あなたは私の一番の親友なんだから!」
坂本加奈は甘い声で言い終わると、また笑みを浮かべた。「それに、私をいじめたのはあなたじゃないもの!」
佐藤薫の目から涙が止めどなく流れ落ち、声を詰まらせながら言った。「ごめんなさい...」
坂本加奈は彼女が泣くのを見ると心が痛くなり、隣に座って、ティッシュで涙を拭いてあげた。
「もう、泣かないで!私を騙したことは必ず仕返しするけど、でも泣かないで。こんなに泣かれたら、仕返しなんてできないじゃない!」
佐藤薫は彼女が自分を慰めているのを知り、より胸が苦しくなり、そのまま彼女を抱きしめて泣き出した。
「加奈、あなたって本当にいい子...」
坂本加奈は彼女の背中を優しく叩きながら慰めた。「もういいよ、蘭、泣かないで!目が腫れちゃうと可愛くなくなっちゃうよ」
佐藤薫は啜り泣きながら言った。「可愛くなくなってもいい」
「それはダメよ」坂本加奈は愛らしい口調で言った。「私のブライズメイドは綺麗じゃないとダメ。私の面目が立たないでしょ」
佐藤薫は顔を上げ、驚いた目で見つめた。「私を...まだブライズメイドにしてくれるの?」
「もちろん!」坂本加奈は彼女の頬の涙を拭いながら、正々堂々と言った。「あなたは私を騙したんだから、今回はブライズメイドとして働いてもらうわ。しかもご祝儀なしよ!」
佐藤薫は涙を浮かべながら笑い、首を振った。「ご祝儀なんていらない。これからどんな使い方をされてもいいわ。私があなたの言うことは何でも聞くから!」