「蘭ちゃんが彼氏からプロポーズされたの」坂本加奈はもう一度繰り返し、甘えた声で言った。「お兄ちゃん、彼女の彼氏がどんな人なのか聞いてきてくれない?」
たいしたことない、クズ野郎だ!坂本真理子は心の中で罵った。バカ、昼間にあれだけはっきり言ったのに、一言も聞いていなかったのか。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、坂本真理子!」坂本加奈は彼が黙っているのを見て、不思議そうに何度か呼びかけた。
「魂を呼んでるのか!」坂本真理子は我に返り、深く息を吸って心の中の苛立ちと怒りを抑えた。「お前は新婚旅行を楽しめばいい、彼女のことなんか気にするな!彼氏がクズでも、本人が満足してるかもしれないだろ!」
「お兄ちゃん...」坂本加奈は甘えた声で、「蘭ちゃんのことをそんな風に言わないで!」
「わかったよ、俺が何とかする」坂本真理子は心の中でどれだけ不愉快でも、大切な妹に対しては口調を和らげた。「新婚旅行を楽しめ。佐藤薫のことは気にするな。俺がいるから、お前の親友が傷つけられることはない。これでいいだろう」