坂本真理子は彼女が何を言おうとしているのか察し、目に笑みを浮かべながら、彼女の言い残した言葉を続けた。
「私たちが夫婦だと誤解されたんだね」
「誰があなたの妻よ」佐藤薫は小声で反論した。「早く写真を消してよ」
「消さない」坂本真理子の声は断固としていた。「たとえあなたが一生結婚しなくても、私と結婚しなくても、この写真を見るたびに、俺の妻になったつもりでいるよ」
佐藤薫は顔を上げて彼を睨みつけた。「誰があなたの妻になるって」
「俺の心の中でって言ってるだけで、本当に俺の妻になったとは言ってないだろう」坂本真理子は目を細めた。「それとも、実は少しだけ俺と結婚したい気持ちがあるのかな?」
「ないわよ。勝手なこと言わないで。自意識過剰よ」
佐藤薫は考えることなく答え、ドレスの裾を持って着替え室へウェディングドレスを脱ぎに行こうとした。