残りの言葉は言わず、お母さんに想像させた。
佐藤のお母さんは我に返り、「彼に心を動かされて気持ちが変わったのね。でも結婚は少し早すぎないかしら?」
「お母さん、私たち長年の付き合いよ。恋愛なんてもう関係ないわ」
佐藤薫は振り向いて、笑顔を見せた。「彼は手続きに時間を無駄にしたくない、毎日一緒にいたいって言ったの」
佐藤のお母さんは考えてみると、確かに坂本真理子らしい行動だと思った。結局、彼は本当に蘭のことが好きなのだから。
「もう結婚したんだから、母さんは何も言わないわ。あなたが幸せに暮らせるなら、私たち両親も安心よ」
「お母さん、安心して。今度は彼が私を悲しませることはないと信じてるわ」
……
坂本真理子は佐藤のお父さんに水を注ぎ、「お父さん、どうぞ」
佐藤のお父さんはまだ慣れない様子で、目がピクリと動いた。受け取りながら「ありがとう」と言った。