佐藤薫は浴室のドアの前に立ち、唇を噛みながらしばらく考えた末、やはり彼にはっきりと言うべきだと思った。
結局同じ屋根の下で暮らすことになるのだから、はっきりさせておかないと、これからもっと気まずい思いをすることになる。
坂本真理子が洗面所から出てくると、彼女が壁にぴったりとくっついて、小さな頭を垂れて何かを考え込んでいるのが目に入った。
「使い終わったよ、どうぞ」
そう言って、服を取りに衣装ケースの方へ向かった。
「あの……」佐藤薫は彼を呼び止めたものの、言葉を詰まらせた。
「どうした?」坂本真理子は眉をひそめて尋ねた。
佐藤薫は密かに深呼吸をして、言葉を選びながら話し始めた。「あなたの気持ちは尊重します。でも、一人の男性として、最低限の自制心は持つべきだと思います。確かに私たち結婚証明書は持っていますが、本当の夫婦ではありません。私に対して……えっと…」