第515章:一時の迷い

坂本加奈は口に入れた海老の味が一瞬にして美味しくなくなった。なんだか母親に当てつけられているような気がした。

自分は浩二のことをとても心配しているのにQAQ

佐藤薫は何も言わず、紅い唇が少し動いた。今の上野美里のような開明的な姑は実際少ないから、加奈と坂本真理子がこんなに優しいのも納得だ。

午後、坂本健司も会社に戻らず、久しぶりの家族団らんで、黒川浩二を連れて二階に上がり、自分の書道の作品を見せた。

佐藤薫と坂本加奈、上野美里は一緒に果物を食べながら、どこの服が可愛いとか、そのうちネイルに行こうかとか話していた。

坂本加奈は絵を描くので、ネイルは邪魔になるだけで意味がない。佐藤薫も仕事の関係で、派手すぎるのはできず、せいぜい単色のマニキュアを塗る程度だった。

上野美里は落胆して溜息をつき、「最近の若い女の子は買い物も好きじゃない、ネイルも好きじゃない、エステも好きじゃない。仕事してお金稼ぐことばかり考えて、家でゲームばかりして。女性としての楽しみをどれだけ失っているのかしら」

佐藤薫と坂本加奈は目を合わせ、暗黙の了解で無邪気に肩をすくめた。

ゲーム中の坂本真理子が追い打ちをかける:「若い女の子は若さが資本だから、何もしなくても綺麗なの。年取った人だけが美しさを保つためにそういうことが必要なんだよ」

上野美里は怒って近くのクッションを掴んで彼の額に投げつけた。「明日、左足から家に入ったら坂本家から追い出すわよ」

坂本真理子:「………………」

私のペンタキルがああああああ!!!

***

夜、佐藤薫は食事を終えると部屋に戻ってシャワーを浴び、パジャマに着替えて出てきたところ、赤いベッドシーツの上に座っている男性を見て、気持ちが複雑で不安になった。

これまで異性と同じベッドで寝たことがなかった。

坂本真理子は何かを察知し、顔を上げて彼女を見た。「左と右、どっちで寝る?」

佐藤薫は少し考えて左側を選んだ。トイレに近いほうが便利だと思ったからだ。

坂本真理子は快く左側を譲り、自分は右側に移動して、そのままスマホを続けた。

佐藤薫は左側に横たわり、薄い布団をかけ、天井を見上げると、視界の端で携帯をいじっている男性が見え、なんとなく気まずく感じた。

体を反転させ、彼に背を向けた。