カクテルのアルコール度数は低く、甘酸っぱい味わいで、黒川詩織は思わず2杯も飲んでしまい、小さな顔は赤く染まり、桃色の頬紅を塗ったようになった。
彼女が3杯目を注文しようとしたとき、森口花に止められた。
「適度な飲酒は心を和ませるが、飲みすぎは体に悪い」
黒川詩織は彼の手を払いのけ、サービスベルを押した。「心が傷むよりはましよ」
手の傷は既に痂になっていたが、心の傷はまだ癒えていなかった。
森口花は仕方なく彼女の願いを聞き入れた。「じゃあ、もう1杯だけ。それを飲んだら、もう飲まないでね」
黒川詩織は反論せず、ウェイターが3杯目のカクテルを持ってくると、唇を舐めながら一気に飲み干した。
以前はお酒を飲むと頭がぼんやりするなんて気づかなかったけど、今は体全体が軽くなったような感じで、全ての感情も解放されやすくなっていた。