第555章:妻を愛するのみ

黒川詩織はちらりと見て、確かに薄田正からのメッセージだったが、ただ軽く「行かない」と言っただけで、それ以上は何も言わなかった。

森口花は携帯を置いて、何気なく言った。「そうだ、携帯のパスワード変えたんだけど、何だと思う?」

「何?」誕生日でもない、記念日でもない、全く見当がつかなかった。

森口花は彼女の隣に横たわり、艶やかな唇に笑みを浮かべて言った。「9257」

黒川詩織は困惑した表情で、その意味が分からなかった。

森口花は彼女の鼻先に近づいてキスをし、「妻を愛す、ただ妻のみを愛す」

黒川詩織の心がとろけ、目に笑みが浮かんだが、唇の端は必死に抑えていた。

「まだ寝る?」彼が尋ねた。

黒川詩織は頷いた。他に何があるというの?

「ただ寝るだけ?」

黒川詩織は恥ずかしそうに彼を軽く殴り、「寝るの」