第557章:私を信じてくれますか

森口花は目を引き締め、反射的に彼女の腕を掴んだ。「詩織……」

黒川詩織は、どこからそんな力が出てきたのか、瞬時に彼の手を振り払った。

彼を見上げた時、その眼差しは死んだ水のように静かで、ヒステリックな泣き叫びも怒りも見せなかった。

あるのは心が灰のように死んでしまった後の無関心と、まるで他人を見るような冷たさだけだった。

森口花は心の中で不安を覚え、彼女を掴もうとしたが、黒川詩織は振り返りもせずに警察官と一緒に立ち去った。

彼女の細くて寂しい後ろ姿が決然と去っていくのを見て、森口花は心の中である直感を感じた。詩織を失うことになるのだと。

手術室で横たわる松岡菜穂と、彼の妻。まるで彼を二つに引き裂くかのようだった。

長い間迷った末、結局彼は追いかけることをせず、携帯を取り出して秘書に電話をかけた。「黒川社長に連絡してください。詩織が警察署にいます。」