第613章:後悔しないで

森口花の蒼白い顔は今や霜に覆われ、その声は限りなく冷たかった。「私は今、車椅子に座った障害者で、何も残っていない。最後にこの会社だけが残っているんだ。欲しければ、あげてもいい」

冷たい手が彼女の手を払いのけた。その意図は明白だった。

前半生、彼は彼女のために生き、贖罪のために生きてきた。残りの人生をそのように生きたくはなかった。

重い枷を背負い、道徳の束縛の中で、希望のない人生を送りたくはなかった。

満島洋子のまつ毛が震え、目から涙がゆっくりと流れ出た。「本当にそうするの?」

森口花は冷たい指先で彼女の目の下の涙を拭い、静かな口調で感情を込めずに言った。「洋子、誰も一生他人に頼って生きることはできない。あなたの人生は、自分で歩むべきだ」

以前は自分が間違っていた。一歩一歩甘やかしてしまい、今日のような状態になってしまった。

欲望は膨張し、永遠に満たされることのない野獣のようだった。

満島洋子は冷たく彼の手を払いのけ、優しかった瞳に今までにない冷淡さが浮かんだ。「森口花、後悔しないでね」

そう言い残し、彼女は振り返ることなくオフィスを後にした。

森口花の腕は宙に固まったまま、数秒後に静かに下ろされた。

引き止めることもなく、このように別れの道を選んだ。

田中静佳は松岡菜穂が目を赤くして出て行くのを見て、心配になってオフィスに入った。森口花の顔の傷跡を見て、表情が変わった。「社長...」

「大丈夫だ、大げさに騒ぐな」森口花は淡々と言った。

「松岡お嬢様とまた喧嘩されたんですか?」田中静佳は目を伏せ、申し訳なさそうに頭を下げて言った。「申し訳ありません。おそらく誤解されたのかも...」

言葉は途中で森口花に手で遮られた。「君には関係ない。この期間、君には迷惑をかけた。これからは彼女は来ないだろう」

田中静佳は目を上げて彼を見た。「社長...」

「ゴホッ、ゴホッ...」森口花は頭を下げ、口を押さえて激しく咳き込み始めた。

田中静佳は彼の様子がおかしいことに気づき、すぐに彼の額に手を当てた。すると表情が深刻になった。「社長、熱があります。すぐに病院にお連れします」

彼女は運転手に車の準備を電話で指示し、一方森口花は頭を下げたまま、止まらないほど激しく咳き込んでいた。