第39章 絶縁!

沢井千惠は目の前の白髪の母親を見つめながら、四十八年の朝夕の付き合いを思い返した。親のない孤児だった彼女にとって、沢井家はずっと大切な存在だった。

しかし、今は決別の時だと彼女は分かっていた。

もし今決別しなければ、沢井奥さんは次に佐藤家に直接協力を求めに行くかもしれない。そうなれば、佐藤さんが承諾すれば橘さんが恥をかき、断れば橘さんが困ることになる。

沢井奥さんは彼女が黙ったままなのを見て、辛抱強く言った。「千恵、私が求めているのはそう多くないのよ。Zグループとの協力を取り付けるか、佐藤家との協力を得るか、どちらかよ。あなたが言いにくいなら、私が話しに行くわ…」

やはりそうだった。

沢井千惠は突然笑った。

「千恵、分かってくれたの?そうよ、母と娘なのに、どうしてこんなに他人行儀なの?Zグループでも佐藤家でも、私たちが求める程度の協力なんて、彼らにとっては些細なことよ…」

沢井千惠は彼女の言葉を遮った。「確かにこの服は沢井家が買ってくれたものです…」

そう言うと、彼女は両手を後ろに回してファスナーを下ろし、服を脱ぎ捨てた。

沢井奥さんは少し驚いて「あなた、何をするの?」と言った。

すると彼女は長い腕を伸ばし、チャイナドレスを母親の前に投げ出した。

「お返しします」

「家にある服は全部まとめて、持って帰っていただきます」

「あの百万円も、なんとか工面してお返しします…」

「お母さん、これで借りも貸しもなしですね?」

……

沢井奥さんは呆然と彼女を見つめていた。

この時の沢井千惠の表情は相変わらず穏やかだったが、その目には深い失望と冷たさが宿っていた。沢井奥さんは手足が冷たくなるのを感じた。

彼女は沢井千惠を育て上げ、その性格をよく知っていた。

温厚で親しみやすく、礼儀正しい人柄に見えるが、それは表面的なものに過ぎない。もし本当に人に簡単に踏みつけられるような人間なら、どうして沢井会社をここまで発展させることができただろうか?

ただ、彼女が家族の愛情に飢えていたため、沢井家の方々に対して特別に寛容で、何をされても気にしなかっただけだ。

しかし、そんな女性でも、一度決心したら、その決意は揺るがない。

沢井奥さんは慌てた。「千恵、お母さん冗談よ。どうしてそんなに真に受けるの?」