第271章 お祖父さん

書斎は散らかり放題だった。

沢井恭子は近寄って座り、まず佐藤翔太の頭を撫でた。「疲れた?」

佐藤翔太は即座に微笑んで答えた。「ママ、全然疲れてないよ!」

ママと一緒にいられて、ママに褒められて、頭を撫でてもらえるだけで、すぐに元気が出てくるんだ!

佐藤和利は口を尖らせた。「お世辞屋め!」

沢井恭子は鋭い視線を投げかけた。

佐藤和利はすぐに横で座っている初瀬愛の方を見て、「ママ、犬を叱ってるだけだよ!」

初瀬愛は即座に応えた。「ワン!」

沢井恭子は「……」

彼女は放っておいて、本をめくりながら一緒に探し続けた。

さらに50冊の本を探し終えると、佐藤和利はため息をつきながら立ち上がった。「もう探すのやめた!」

沢井千惠は少し驚いて「お金はいいの?」

佐藤和利は言った。「時間の無駄だよ。50冊探すのに1時間もかかるんだ。その時間があれば、もっと騙し...稼げるのに!」

沢井千惠は怒り気味になった。「橘さん、あの子を何とかして!」

佐藤和利は沢井恭子を見て甘えるように言った。「ママ、僕まだ小さいんだよ。成長期なのに、ずっとここにいるのは体によくないよ〜」

沢井恭子は顎に手を当てて「そう?じゃあ、下に行って遊んでおいで」

「はーい!」佐藤和利は立ち上がり、初瀬愛の手を引いて出ようとした。

沢井恭子は「翔太、しっかり探してね。おじいちゃんが沢山の遺産を残してくれているかもしれないわよ」と言った。

その言葉に、佐藤和利の体が固まった。

突然振り返って、また座り直した。「おばあちゃん、やっぱり一緒に探すよ!お金はいらないから、無料で!」

沢井千惠は思わず笑った。「いいのよ、あなたは成長期なんでしょう?ずっとここにいるのは良くないわ」

「いやいや、成長期なんて急ぐことないよ!」

「……」

四人で午前中いっぱい探したが、手がかりは見つからなかった。

午後4時、沢井恭子は時計を見て、音楽祭に行く準備をした。

立ち上がって机の上の『赤と黒』を見ると、本が開いたままで、中に挟まれていた写真がはっきりと目に入った。

白黒写真でも、おじいちゃんが若い頃はハンサムだったことがわかる。

年を取った今はどんな様子なのだろう?

彼女は軽く首を振り、服を着替えて外に向かった。

その時、浦和音楽学院では。