書斎は散らかり放題だった。
沢井恭子は近寄って座り、まず佐藤翔太の頭を撫でた。「疲れた?」
佐藤翔太は即座に微笑んで答えた。「ママ、全然疲れてないよ!」
ママと一緒にいられて、ママに褒められて、頭を撫でてもらえるだけで、すぐに元気が出てくるんだ!
佐藤和利は口を尖らせた。「お世辞屋め!」
沢井恭子は鋭い視線を投げかけた。
佐藤和利はすぐに横で座っている初瀬愛の方を見て、「ママ、犬を叱ってるだけだよ!」
初瀬愛は即座に応えた。「ワン!」
沢井恭子は「……」
彼女は放っておいて、本をめくりながら一緒に探し続けた。
さらに50冊の本を探し終えると、佐藤和利はため息をつきながら立ち上がった。「もう探すのやめた!」
沢井千惠は少し驚いて「お金はいいの?」
佐藤和利は言った。「時間の無駄だよ。50冊探すのに1時間もかかるんだ。その時間があれば、もっと騙し...稼げるのに!」
沢井千惠は怒り気味になった。「橘さん、あの子を何とかして!」
佐藤和利は沢井恭子を見て甘えるように言った。「ママ、僕まだ小さいんだよ。成長期なのに、ずっとここにいるのは体によくないよ〜」
沢井恭子は顎に手を当てて「そう?じゃあ、下に行って遊んでおいで」
「はーい!」佐藤和利は立ち上がり、初瀬愛の手を引いて出ようとした。
沢井恭子は「翔太、しっかり探してね。おじいちゃんが沢山の遺産を残してくれているかもしれないわよ」と言った。
その言葉に、佐藤和利の体が固まった。
突然振り返って、また座り直した。「おばあちゃん、やっぱり一緒に探すよ!お金はいらないから、無料で!」
沢井千惠は思わず笑った。「いいのよ、あなたは成長期なんでしょう?ずっとここにいるのは良くないわ」
「いやいや、成長期なんて急ぐことないよ!」
「……」
四人で午前中いっぱい探したが、手がかりは見つからなかった。
午後4時、沢井恭子は時計を見て、音楽祭に行く準備をした。
立ち上がって机の上の『赤と黒』を見ると、本が開いたままで、中に挟まれていた写真がはっきりと目に入った。
白黒写真でも、おじいちゃんが若い頃はハンサムだったことがわかる。
年を取った今はどんな様子なのだろう?
彼女は軽く首を振り、服を着替えて外に向かった。
その時、浦和音楽学院では。