第279章 私は彼女に会いたい!

「……」

会場は静まり返った。

全員が信じられない様子で高台を見つめていた。

五十嵐孝雄の頭は真っ白になった。

今、従姉が何て言った?

彼女も本田葵?!

細川奈々未が本田葵?

理屈では試合が終わり、高揚した音楽が収まった後、体内のドーパミンが徐々に消え、傷の痛みが少しずつ襲ってくるはずだった。

しかし、この瞬間、彼はこのニュースに再び衝撃を受け、指の痛みを忘れてしまった。

彼は唾を飲み込んだ。興奮と感動が入り混じった感情で胸が膨らむような感覚があり、何かをしないと発散できないような気がした。

でも、何をすればいいのか分からなかった。

これは彼の憧れのアイドルなのだ!

下の観客たちはさらに驚愕していた。

民族音楽学科の学生たちが最初に我に返り、狂ったように叫び始めた。「本田葵!ああああ!本田葵!」