「……」
会場は静まり返った。
全員が信じられない様子で高台を見つめていた。
五十嵐孝雄の頭は真っ白になった。
今、従姉が何て言った?
彼女も本田葵?!
細川奈々未が本田葵?
理屈では試合が終わり、高揚した音楽が収まった後、体内のドーパミンが徐々に消え、傷の痛みが少しずつ襲ってくるはずだった。
しかし、この瞬間、彼はこのニュースに再び衝撃を受け、指の痛みを忘れてしまった。
彼は唾を飲み込んだ。興奮と感動が入り混じった感情で胸が膨らむような感覚があり、何かをしないと発散できないような気がした。
でも、何をすればいいのか分からなかった。
これは彼の憧れのアイドルなのだ!
下の観客たちはさらに驚愕していた。
民族音楽学科の学生たちが最初に我に返り、狂ったように叫び始めた。「本田葵!ああああ!本田葵!」
管弦楽学科の学生たちは完全に呆然としていた。
最初は細川奈々未が東方楽器の脇役をするのは侮辱だと思っていたが、この瞬間、彼らは理解した。彼女は決して脇役ではなかったのだ。
彼女は民族音楽学科でも主役だったのだ!!
特に先ほどの一曲は、会場の彼らを完全に征服した。
民族音楽がこんなにすごいとは!こんなに素晴らしいとは!
この瞬間、管弦楽学科の学生たちの骨の髄まで染み付いていた民族音楽学科への軽蔑が徐々に消え、代わりに古琴への憧れへと変わっていった。
彼らも熱狂し、民族音楽学科の人々と一緒に叫んだ。「本田葵!本田葵!」
ネット上のライブ配信では。
一般視聴者たちはあまり理解できていなかった。
この曲は確かにとても素晴らしく、高音も低音も完璧だった。しかし正直なところ、古琴の音質はそこにあるものの、どうしてピアノやバイオリンなどの楽器の豊かさに及ぶことができるだろうか?
特に先ほどの温井琴美が演奏した交響曲は、ネット越しでもあの天衣無縫な感覚が伝わってきた。
だから古琴は音質の面で、西洋楽器より劣っているのだ。
東方楽器の中で、彼らと比べられるのはおそらく二胡だけだろう?
そのため、彼らにとってこの曲は温井琴美の曲と引き分けにしかならないと思われた。
しかし、なぜ会場の観客たちはあんなに興奮しているのだろう?
そこで、みんな次々と質問を投げかけた: