「……」
会場は静まり返った。
全員が信じられない様子で高台を見つめていた。
五十嵐孝雄の頭は真っ白になった。
今、従姉が何て言った?
彼女も本田葵?!
細川奈々未が本田葵?
理屈では試合が終わり、高揚した音楽が収まった後、体内のドーパミンが徐々に消え、傷の痛みが少しずつ襲ってくるはずだった。
しかし、この瞬間、彼はこのニュースに再び衝撃を受け、指の痛みを忘れてしまった。
彼は唾を飲み込んだ。興奮と感動が入り混じった感情で胸が膨らむような感覚があり、何かをしないと発散できないような気がした。
でも、何をすればいいのか分からなかった。
これは彼の憧れのアイドルなのだ!
下の観客たちはさらに驚愕していた。
民族音楽学科の学生たちが最初に我に返り、狂ったように叫び始めた。「本田葵!ああああ!本田葵!」