021 会合

橋本拓海は一瞬驚いたが、すぐに言った。「それとは違うよ。あのバカは少し名が売れただけで調子に乗って、所属の女優に手を出したんだ。しかも強情な相手に当たってしまって、開き直られて逆に付きまとわれちゃって...まったく、蹴り飛ばしてやりたいよ!」

橋本拓海は怒りに任せて身振り手振りを交えながら、胸を叩いて悔しがった。

井上邦夫は力なく言った。「そんなに血気盛んにならないほうがいいよ。今目をつけている相手が次のバカじゃないって、どうして分かるんだ?」

橋本拓海はニヤニヤ笑って答えた。「そんなことないよ。この人は女性だし!しかも簡単には姿を見せないってことは、容姿に自信がないんだろうね。考えてみろよ、女性で、不美人で、才能がある...これって最高のパートナーじゃないか!一生、変な男女関係のトラブルに悩まされることもないし、色欲に目がくらんだバカの尻拭いをする必要もない!」

橋本拓海は興奮して拳を握りしめたが、残念ながら、三人の親友は誰も彼の話に乗ってこなかった。

関口孝志の携帯が振動し、彼は取り出して一瞥した。「藤原さんはアパートを出ました。身の回りの物以外は何も持っていっていません。」

関口孝志は暗い表情で返信した。「母が彼女に会いに行ったのか?」

「林さんも。」相手から返信が来た。

関口孝志は携帯を激しくテーブルに叩きつけ、皆が驚いて飛び上がった。

「何をキレてるんだよ?」橋本拓海は不満そうに関口孝志を睨んだ。

関口孝志は彼を無視し、黙って酒を一杯注いで一気に飲み干した。

皆が一瞬固まる中、橋本拓海は恐る恐る尋ねた。「どうしたんだよ?失恋でもしたのか?まさかね?林千代がお前を解放するなんて、天変地異が起きるレベルだろ?」

関口孝志は橋本拓海を鋭く睨みつけ、橋本拓海は即座に口を閉ざした。親友の痛いところを突いてしまったことに気づき、慌てて他の仲間たちに助けを求めるように視線を泳がせた。

関口孝志は子供の頃からそうだった。話したくない時は、無視するのが一番だった。

佐々木和利はグラスを持ち上げて井上邦夫のグラスと軽く合わせながら、さりげなく尋ねた。「海外で買収の話があったんじゃなかったのか?なんでアフリカで鉱山掘ってきたみたいな顔してるんだ?」

井上邦夫は深いため息をつき、顔を手でぬぐった。「アフリカで鉱山掘りのほうがましだよ!」