佐々木和利は好奇心を抱いて尋ねた。「なんだか、理恵に演技をさせたくないような気がするんだけど?」
二見奈津子は首を振った。「家族が反対したら、妹が心を込めてしまって、この件で皆が不愉快になってしまうのが心配なんです。キャスティングは田村先輩が担当していて、彼の目利きは皆信頼していますから。彼が理恵が適役だと思うなら、きっと理由があるはずです。私たちは役に合った俳優を見つけることを一番望んでいますから。」
佐々木和利は頷いた。「じゃあ、理恵に決めさせればいい。あなたが干渉する必要はない。両親も祖父も開明的だから、彼女の行動を制限したりしないよ。あなたのそばにいれば、彼らも安心するだろう。映画の撮影はいつ始まるの?」
佐々木和利は話題を変えた。
「藤原美月が戻ってきてからです。彼女のお母さんの具合があまり良くないみたいで、様子を見に帰っているんです。」と二見奈津子は答えた。
「彼女の家はどこなの?」佐々木和利は何気なく聞いた。
「カナダです。」二見奈津子は答えた。
佐々木和利は少し驚いた様子で「彼女の家は海外なの?」
二見奈津子は頷いた。「はい、家族は皆海外にいます。両親は別れて、それぞれ新しい家庭を持っています。彼女は一人で国内で勉強していて、生活面でも経済面でも自立しています。」
佐々木和利は頷いた。なるほど、だから藤原美月と二見奈津子はこんなに仲が良いのか。ある面で、彼女たちは互いに共感し合えるのだろう。
二見奈津子はため息をついた。「晴子さんは全てが素晴らしい人なのに、恋愛だけがうまくいかなくて。クズ男に出会ってしまって。海外に行くのも良いと思います。あのクズ男に深く傷つけられたから。表面上は何でもないように見えても、私には彼女の気持ちが良くないのが分かるんです。」
「クズ男だと分かっているなら、別れた方が良いんじゃない?」佐々木和利は慎重に話を合わせた。
二見奈津子がこんなに自然に周りの人のことを話してくれることに、彼は新鮮さと心地よさを感じていた。二見奈津子は彼のことを親しい人だと思ってくれているからこそ、こういう話題を共有してくれるのだろう?