井上邦夫が自分を犬と比べるのを聞いて、藤原美月は思わず笑った。「今帰ってきたの?」
井上邦夫はため息をついた。「そうなんだ。飛行機を降りてすぐに戻ってきたんだ。瑞希ちゃんが迷惑をかけていないか心配で仕方なかったけど、連絡先を知らなくて。バーに行ったら、ここ数日来ていないって言われて、電話番号は教えてもらったんだけど、忙しいかもしれないし、時差もあるから、我慢して電話しなかったんだ」
井上邦夫の自然な説明に、藤原美月の心が不思議と揺れた。
今まで誰一人として、こんなに詳しく何かを説明してくれる人はいなかった。
以前あの人と一緒にいた時は、彼は自分の予定を報告することも、行動を説明することもなく、半月も姿を消しても、一言の説明もなかった。
説明されることで、藤原美月は尊重され、大切にされているような感覚を覚えた。