080 傷感

「外に向かって発展する?」藤原美月は不思議そうに尋ねた。

井上邦夫は頷いた。「そうだよ!外に向かって発展して、外の人からの認めを求めるんだ!両親と兄の長年の抑圧の下で、ある日突然気づいたんだ。この世界には彼ら三人だけじゃないって。他の人に認めてもらえばいいじゃないか。兄には及ばないかもしれないけど、負けは負けでいいさ!大したことじゃない。俺が全ての人より劣っているとは思えない。兄だって全ての人じゃないんだから!」

藤原美月は目を瞬かせ、ゆっくりと井上邦夫に親指を立てた。「あなたの言うような状況では、ほとんどの人が鬱になってしまうでしょう。でもあなたは思考の袋小路から抜け出して、自己和解の方法を見つけられた。本当に素晴らしいです。」

この突然の褒め言葉に井上邦夫は少し照れた。

「俺は、ただ、追い詰められて...犬だって追い詰められれば塀を飛び越えるでしょう、俺は—」藤原美月は笑い出した。また犬の比喩か。この井上邦夫には、どこか可愛いところがある。

二人は楽しく麺を食べ、井上邦夫は藤原美月が自分の料理の腕前を認めてくれたことをとても喜んだ。

食事の後、井上邦夫は藤原美月に手を出させず、自分で食器やテーブル、キッチンをきれいに片付けた。

藤原美月の心は、大きく揺さぶられた。

この男性の一つ一つの動作が、彼女にはとても馴染み深かった。それは彼女が以前、別の男性のために何度も行ってきたことだったから。

そして今、彼女のために男性がこれらすべてをしてくれるのを目にしている。

彼女には分からなかった。なぜ今の彼女の心には感動しか残っていないのに、かつての彼は無関心だったのか。

ある事柄は、愛に関係があり、また関係がない。

井上邦夫は瑞希ちゃんを連れて帰った。

藤原美月は微笑みながら彼らを見送り、戻ってきても一文字も本が読めず、出窓に静かに座って、下の往来を眺めながらぼんやりしていた。

今回の海外出張で、彼女は実家に行き、かつてない歓迎を受けた。父は、異母弟二人は大成しそうにないと言い、彼女に家族企業を任せたいと望み、若き俊才を紹介したいと言った。

継母は算盤をはじいて、甥と結婚させようとし、身内で収めようという魂胆だった。

実母の方は、別の名家の若者との縁組みを強く勧め、藤原美月がその家に嫁げば、継父の家での自分の立場も上がるだろうと言った。