しかし、週末の早朝にトラブルが発生した。
藤原美月は深刻な表情で彼女に告げた。「主演の高橋真理子が降板したわ」
「降板?どういうこと?撮影が一週間も始まってるのに、降板?違約金を払うつもり?聞き間違いじゃないでしょうね?」二見奈津子は信じられない様子で藤原美月を見つめた。
藤原美月は静かに頷いた。
「彼女はどこに?」二見奈津子が尋ねた。
藤原美月は一通の手紙を彼女に渡した。「マネージャーの博之ちゃんが持ってきたの。博之ちゃんも必死で探してるわ。高橋真理子は事前に何の兆候も見せずに、昨夜突然いなくなったの。初恋の人を見つけて、その人と一緒に行ったって。博之ちゃんは警察に通報したわ」
「警察?」二見奈津子はますます混乱した。
「状況があまりにも不可解だから、高橋真理子に何かあったんじゃないかって心配してるの」藤原美月は説明した。
この爆弾のようなニュースは撮影現場に衝撃を与えた。主演女優がいなくなって、どうやって撮影を続けるのか?全員が途方に暮れていた。
二見奈津子と藤原美月は頭を抱えながら警察署で博之ちゃんと合流した。
博之ちゃんは目が真っ赤で、明らかに泣いていた形跡があった。
「奈津子さん、彼女は出国してしまったの。こんな無責任な形で」博之ちゃんは二見奈津子の手を握りながら泣いた。
二見奈津子は言葉を失い、何を言えばいいのか分からなかった。
博之ちゃんは警察に通報し、様々な人脈を使って情報を集め、公式・非公式のルートを通じて、ついに高橋真理子が一人の男性と空港から出国する映像を見つけ、彼らが海外行きの航空券を購入していたことが判明した。
帰り道で、二見奈津子は運転しながら長いため息をついた。「彼女、気が狂ったんじゃない?」
藤原美月は窓の外を見つめながら言った。「彼女が狂ったかどうかは分からないけど、私は狂いそうよ」
「キャストを変更しましょう」二見奈津子は藤原美月が狂いそうな理由を理解していた。
「キャスト変更?」藤原美月は額に手を当てながらシートに寄りかかった。