森永さんは二見奈津子に対して、惜しみない賞賛を送った。
佐々木和利はそれを聞きながら、頻繁に頷いていた。
森永さんは少し考えて言った。「私は実家側に立つべきか、それとも婚家側に立つべきかな?」
佐々木和利は笑って答えた。「彼女のスタジオの全員が実家側で、うちの家族も彼女を大切にしているから、やはり私の味方になってください。私は本当に孤立無援なんです。」
森永さんは佐々木和利を見て、最初は驚き、そして笑い出した。「まさか、お前がこんな日が来るとは思わなかったよ。」
佐々木和利は気にせず、とても上機嫌だった。
映画が始まり、会場は徐々に静かになっていった。
二時間後、映画が終わり、照明が順次点灯され、会場は静まり返っていた。時折すすり泣く声が聞こえた。
二見奈津子と藤原美月は主要スタッフと共に登場し、観客に感謝の意を表した。全員が黒いズボンに白いTシャツを着用し、胸には「午後四時半」の文字が映っていた。
司会者がマイクを渡し、一人一人に自己紹介をさせた。佐々木理恵の番になると、彼女は少し恥ずかしそうに緊張していた。
二見奈津子は彼女の隣に立ち、肩を抱いた。
「皆さん、こんにちは。佐々木理恵です。『午後四時半』で杉山役を演じさせていただきました。」と言って、隣の主演男優にマイクを渡した。
二見奈津子は彼女の肩を軽くたたき、小声で「素晴らしかったわ、緊張しないで!」と言った。
佐々木理恵は横を向いて二見奈津子に感謝の笑みを向けた。義姉がそばにいると、緊張が和らいだ。
彼女は前に座っている兄を見つめた。佐々木和利は静かに親指を立てて見せた。
佐々木理恵は嬉しさのあまり手で口を覆った。兄が彼女を認めてくれたのだ。佐々木理恵は急に全身に力がみなぎり、背筋も伸びた。
司会者は「ご存知の通り、この映画のヒロインは新人を起用しました。最高の観賞体験を提供するため、映画公開前まで新人女優を一切公開していませんでした。本日が彼女の初めての公の場での登場となります。では、佐々木理恵さんに初めての映画撮影の感想を伺いましょう。」
司会者はマイクを佐々木理恵の前に差し出した。
佐々木理恵は驚いて、二見奈津子の方を見た。
二見奈津子は頷き、微笑んで励ました。