175 地獄

清涼で甘い液体が喉に流れ込み、藤原美月は貪るように飲み込んでいた。

干からびた五臓六腑が潤いを得て、まるで地獄から這い上がってきたような気分だった。

「美月?美月?美月?美月?」

耳元で高低のある呼び声が聞こえ、藤原美月は苦労して目を開けた。目に映ったのは、井上邦夫の切迫した表情だった。

彼は無精ひげを生やし、目は窪み、その瞳には焦りが満ちていた。

「目が覚めたの?」井上邦夫は喜びの声を上げた。

「よかった、これ以上目が覚めないようだったら救急車を呼ぶところだった」井上邦夫は安堵の表情を浮かべ、その場に座り込んだ。

「水——」藤原美月は懸命に要求した。喉が痛くて仕方がなかった。

「ああ、そうだ、水だ。たくさん飲んで、水を飲めば早く良くなるから」井上邦夫はそう言いながら、立ち上がって水を汲みに行った。