175 地獄

清涼で甘い液体が喉に流れ込み、藤原美月は貪るように飲み込んでいた。

干からびた五臓六腑が潤いを得て、まるで地獄から這い上がってきたような気分だった。

「美月?美月?美月?美月?」

耳元で高低のある呼び声が聞こえ、藤原美月は苦労して目を開けた。目に映ったのは、井上邦夫の切迫した表情だった。

彼は無精ひげを生やし、目は窪み、その瞳には焦りが満ちていた。

「目が覚めたの?」井上邦夫は喜びの声を上げた。

「よかった、これ以上目が覚めないようだったら救急車を呼ぶところだった」井上邦夫は安堵の表情を浮かべ、その場に座り込んだ。

「水——」藤原美月は懸命に要求した。喉が痛くて仕方がなかった。

「ああ、そうだ、水だ。たくさん飲んで、水を飲めば早く良くなるから」井上邦夫はそう言いながら、立ち上がって水を汲みに行った。

藤原美月は自分がソファーに横たわっていることに気づいた。薄い毛布が掛けられ、背中には二つのクッションが置かれていた。

確か瑞希ちゃんを抱いてベッドで寝たはずなのに?

そう考えていると、瑞希ちゃんがソファーに飛び乗ってきて、毛布の匂いを嗅ぎ、彼女の手元まで来て手を舐め、哀れっぽい目で見つめてきた。

彼女は手を伸ばして瑞希ちゃんを抱き寄せ、井上邦夫の方を振り向いた。

井上邦夫はまずコップに三分の一ほど熱湯を注ぎ、さらに三分の二の冷水を足し、それから蜂蜜を二さじ加えて手早く混ぜ、ソファーに座って彼女を支えながら言った。「はい、飲んで。この温度の方が良いから」

藤原美月はそのとき気づいた。あの二つのクッションは井上邦夫が寄りかかっていたものだったのだと。

もしかして、昨夜は彼の膝の上で眠っていたのだろうか?

温かく甘い蜂蜜水が喉を通る。それは夢の中で感じた味だった。

彼女は一気に飲み干し、コップを持ったまま井上邦夫に尋ねた。「私、どうしたの?」

自分の声が嗄れているのに気づいた。

井上邦夫はコップを受け取って立ち上がり、ため息をつきながら説明した。「熱を出したんだ。四十度近くまで上がってね。医者の友達に電話したら、今は病院にインフルエンザの患者が多いから、安全のため自宅で看護した方がいいって。薬を飲ませて、物理的に熱を下げたんだ」