「お姉さんに会えないでしょうか?心配です」二見奈津子は、自分の力ではどうにもならないことを知っていた。彼女は向井輝のことだけを心配していた。
「焦らないで。お姉さんは大丈夫だよ。警察も兄貴の身分を知っているから、適切に対応してくれるはずだ」佐々木和利は冷静だった。
調停室で、二見奈津子は怒りに満ちた表情で、化粧が崩れるほど泣いていた斎藤由美と、片手で頭を抱え、苦痛に歪んだ表情をしている若い男性を見た。彼が彼女のいとこの田中安に違いなかった。
佐々木和利が入室すると、佐々木氏の内村弁護士が立ち上がった。
佐々木和利は彼に頷いた。
斎藤由美は彼らを横目で見て、冷笑いながら言った。「佐々木さん、私たちの面子を立てないとは言いませんが、私のいとこがこんなに傷つけられたのに、黙って我慢しろというのですか?佐々木家がどんなに力があるとしても、強引に押さえつけることはできないでしょう?」
佐々木和利は淡々と言った。「警察署で我が家の力を持ち出すとは、斎藤さんは佐々木家が権力を乱用していると言いたいのですか?ご期待に添えず申し訳ありませんが、我が家にそんな力はありません。この方が重傷なら、まず病院に行きましょう。この包帯は簡単すぎます。治療が遅れて何か不測の事態が起これば、これは単なる傷害事件の範疇を超えてしまいますよ」
斎藤由美は佐々木和利の冷淡な態度に一瞬たじろいだ。
彼らは何度か一緒に食事をしたことがあったが、主役はいつも佐藤美咲で、彼女は単なる付き添いだった。
彼女には佐々木和利が佐藤美咲に気がないことがわかっていたが、少なくとも噂にあるような冷たい表情ではなかった。
もし彼がずっとこのような氷の彫刻のような鋭い様子なら、佐藤美咲も恐らく余計な期待を抱くことはなかっただろう。
斎藤由美は今、多少後悔していた。直接佐々木家、特に佐々木和利と敵対するのは、少し良くない選択だったかもしれない。
佐々木和利は斎藤由美には一瞥もくれず、直接担当警察官に言った。「警察官、私たちは向井輝の家族です。規則通りに処理してください。どんな処罰でも受け入れます。佐々木家は全面的に協力します」