「お姉さんに会えないでしょうか?心配です」二見奈津子は、自分の力ではどうにもならないことを知っていた。彼女は向井輝のことだけを心配していた。
「焦らないで。お姉さんは大丈夫だよ。警察も兄貴の身分を知っているから、適切に対応してくれるはずだ」佐々木和利は冷静だった。
調停室で、二見奈津子は怒りに満ちた表情で、化粧が崩れるほど泣いていた斎藤由美と、片手で頭を抱え、苦痛に歪んだ表情をしている若い男性を見た。彼が彼女のいとこの田中安に違いなかった。
佐々木和利が入室すると、佐々木氏の内村弁護士が立ち上がった。
佐々木和利は彼に頷いた。
斎藤由美は彼らを横目で見て、冷笑いながら言った。「佐々木さん、私たちの面子を立てないとは言いませんが、私のいとこがこんなに傷つけられたのに、黙って我慢しろというのですか?佐々木家がどんなに力があるとしても、強引に押さえつけることはできないでしょう?」