「お義姉さん?奈津子?」関口孝志は嬉しそうに足を止めた。
隣で腕を組んでいた林千代がようやく二人に気付いた。
向井輝は笑って言った。「まあ、婚約者と一緒に買い物に付き合ってくれる良い男性がいるなんて。林さん、もっと付き合ってもらうべきよ。結婚したら、こんな待遇はなくなっちゃうかもしれないわよ!」
関口孝志は少し照れくさそうに笑って言った。「兄さんと和利さんは忙しすぎるから。今日は丁度暇だったので、母の誕生日プレゼントを選びに付き添ってきたんです。」
林千代が何か言う前に、関口孝志は彼女の腕を解き、「ちょうどいいや、女性同士で買い物の話も弾むでしょう。プレゼントも買えたし、僕は先に行きます。好きなものがあったら、僕のカードで買ってください。和利さんと井上さんを探しに行きます。二人が帰ってきたのに、まだ会えてないんです。」
林千代が何も言えないうちに、関口孝志は逃げるように立ち去った。
林千代は少し気まずそうだった。
向井輝は笑って言った。「まあいいわ、行かせましょう。後で仕返しできるでしょう。あの人たちが集まると途端に子供に戻るのよ。みんな大人げないわ。」
林千代は微笑んだ。
向井輝は尋ねた。「あなたたち二人、会ったことあるでしょう?」
二見奈津子は淡々と答えた。「はい、一緒に食事をしたことがあります。」
林千代は目を伏せ、二見奈津子の視線を避けながら、向井輝に尋ねた。「お義姉さんの展示会の作品は本当に素敵でしたね。私たちもたくさん注文させていただきました。」
向井輝は言った。「商品は全部届いたかしら?アフターサービスで何か問題があれば、直接私に言ってくださいね。」
「ありがとうございます。よろしければ、お昼ご飯をご一緒させていただけませんか。」林千代は感謝の気持ちをどう表現すればいいのか分からないようだった。
向井輝は二見奈津子を見て、笑顔で答えた。「いいわよ、せっかくの機会だし。」
二見奈津子は林千代に良い印象を持っていなかった。それは彼女が佐藤美咲や斎藤由美と親しいからだけではなく、この二人が既婚の佐々木兄弟に対して不純な気持ちを持っていることを知りながら、制止するどころか、むしろ密かにチャンスを作っているからだった。
しかし向井輝が乗り気そうだったので、反対はしなかった。
料理を待っている間、向井輝はトイレに行った。