病院で、田中弥生は眠っている佐藤健二を見て、やっと安堵の息をついた。
救急処置が間に合って、佐藤健二は危機を無事に乗り越えることができた。
「奥様、ご家族の奥様方がお見えになりました」と秘書の富士が耳元で小声で伝えた。
田中弥生は少し驚き、眠っている佐藤健二を一瞥してから頷き、二人の特別看護師に合図を送り、富士と一緒に部屋を出た。
富士は歩きながら静かに話した。「田中希美様から、最近の業務の進捗状況を佐々木取締役に報告し、佐々木取締役が既に彼と共に業務を処理していますので、ご安心くださいとのことです」
田中弥生は頷いた。「佐々木和利は二見奈津子の夫で、私たちの孫婿、つまり身内だから、今後何かあったら、私たちがいない時は直接彼らに相談して処理してもらいなさい」
「はい」と富士は応えた。
鈴木清美たちは田中弥生を見るなり、一斉に立ち上がった。
田中弥生は皆に優しく微笑みかけて尋ねた。「どうして皆さんそろっていらしたの?」
鈴木清美は心配そうな表情で尋ねた。「おばさま、おじさまはどうですか?私たち、知らせを聞いて驚いて、すぐに駆けつけたんです」
田中弥生は皆に座るよう促し、自身も一人掛けソファに座って、優しく言った。「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。やはり心臓の問題で、この頃疲れが重なっていたのでしょう。幸い、救急処置が間に合いました」
長谷川樹富は大きく息をついた。「それは本当に良かったです。私たち、道中ずっと心配で心配で」
彼女は義理の姉妹たちを見やり、二人も同意するように頷いた。
田中弥生はため息をついた。「年を取ると、こういうことも避けられないものね。皆さんにも心配をかけてしまって」
鈴木清美が言った。「おばさま、私たち、後から怖くなりました。おばさまとおじさまが静かに過ごすのをお好みなのは分かりますが、そばに人がいないのは良くありません。ボディーガードや助手、秘書を常に同行させた方が、私たちも安心です」
田中弥生は笑って答えた。「そうね、今回は専属医も同行していたの。あなたの言う通りよ。これだけ万全の態勢でなければ、今回も無事には済まなかったでしょう。これからは落ち着いて、あちこち動き回るのは控えましょう。年には勝てないわね」