262 見舞い

「私はその時、本当に焦っていて、神様仏様に何度もお願いしたけど、両親を心配させないように表に出さないようにしていたの」と向井輝は当時の心境を語った。

佐々木理恵は急いで近寄ってきた。「お兄さんと奈津子さんが土まみれで血まみれの姿を見たとき、私は『わぁ』って声を上げて泣き出してしまったの」

藤原美月は二人の驚くような描写に身の毛がよだつほど怖くなり、二見奈津子が目の前にいるにもかかわらず、心配せずにはいられなかった。「一体どうしたの?なぜ誘拐されたの?最近、誰かを怒らせるようなことをしたの?」

二人とも黙り込んでしまった。

これは佐々木光と長谷川透でさえ解明できていない事件で、彼女たちにはさらに見当もつかなかった。

二見奈津子はその様子を見て尋ねた。「森永さんが主催した研究会に参加して、収穫はあった?」

藤原美月は頷いた。「ええ、あったわ!森永さんは今回、国内外の有名な監督やプロデューサー、配給会社の人たち、それに映画評論家たちを招いて、新しい賞を設立しようとしているの」

「第一期は2年間で、世界中から様々なジャンルの映画を選出して、とても包括的な賞を設定していて、賞金も非常に豊富なの。それに監督基金も設立されて、良い作品があるけど資金が足りない人は申請できるの。要件を満たせば資金面での支援が受けられるわ。若手監督を支援するためのものなの」

二見奈津子はそれを聞いて、とても喜んだ。

「たくさん資料を持って帰ってきたの。森永さんは私たちに課題も残してくれたわ。彼の形になっていない作品をどうにか完成させてほしいって。私たちだけを信頼していると言ってくれたの」藤原美月は生き生きとした表情で語った。

やはり恋は人の精神状態を変えることができるものだ。

二見奈津子はそれには触れずに言った。「次は資料とパソコンを持ってきてくれる?見てみたいの」

藤原美月は嗔んで言った。「あなたって本当に働き者ね!こんなに怪我してるのに、まだ仕事のことを考えてるなんて。森永さんに言ったら叱られるわよ!今のあなたの仕事は早く怪我を治すことだけ!わかった?他のことは気にしないで!」

佐々木理恵も同調した。「そうよそうよ、奈津子さん、ゆっくり休んでね。そうしないとお兄ちゃんが心配するわ!」