佐々木理恵は驚いて言った。「えっ、すごいですね!そんなことまで分かるんですか?」
若い看護師は真面目な顔で言った。「集中治療室の空気までも、二人の愛の気配で満ちていますよ。」
そう言って、思わず笑ってしまった。
向井輝が来て佐々木理恵の肩を叩いた。「いたずらはやめなさい。早く両親とおじいちゃんおばあちゃんに連絡して。心配させないように。」
佐々木和利が予定通り目覚めるかどうか分からなかったため、向井輝は年配の家族全員を家に帰らせていた。
佐々木理恵は急いで電話をかけに行った。
向井輝は長いため息をついた。
とにかく無事で良かった。生きていてくれて良かった。
今回は佐々木和利が先に目を覚ました。ベッドの傍らには軍服姿の兄が座っていた。
「奈津子は?」彼の声はかすれていた。
佐々木光は人差し指を唇に当てて、静かにするよう合図をし、隣を指差して小声で言った。「彼女は興奮しすぎて、医者が鎮静剤を打ったんだ。明日の朝まで眠れる。大丈夫、怪我の回復にもいいことだよ。」
佐々木和利は安心した。
佐々木光は弟にぬるま湯を注ぎ、支えながら飲ませた。「まだ目まいがする?脳震盪だから、しばらく養生が必要だよ。」
「大丈夫」佐々木和利は小声で答えた。
兄の服装を見て尋ねた。「また行くの?」
「うん」佐々木光は軽く返事をした。
佐々木和利は心の中でそっとため息をついた。「気をつけて、必ず生きて帰ってきてよ。」
「分かってる、安心して。」佐々木光は弟を見つめた。兄弟の間では、千言万語を重ねても、この数言で十分だった。
「長谷川透がまだ調査中だ。この連中は俺とは関係なさそうで、おまえのビジネスに関係があるかもしれない。最近接触した人物を洗い直している。」佐々木光は弟を見つめながら言った。
佐々木和利は軽くうなずいた。「大丈夫だよ、心配しないで。任務に集中して。あなたの命は家族全員のものだから、必ず生きて帰ってこないと。家計を支える役目を俺一人に押し付けないでよ!」
佐々木光は微笑んで立ち上がり、かかとを軽く鳴らして弟に敬礼し、振り返ることなく出て行った。
傍らの向井輝はそっと後を追った。佐々木光は玄関で妻にキスをして別れを告げた。「家族のことを頼む。」
向井輝は感情を抑えながら、微笑んで答えた。「分かってます。」