260 目覚め

二見奈津子の涙が佐々木和利の手のひらに落ちた。

「あなたが私を愛してるって言ったけど、熱で頭がおかしくなってるんじゃないの?はっきりした頭で、もう一度言ってほしいの!」

「私、言ったでしょう。次の人生では早めに私を見つけて、恋愛の仕方を教えてって。今、私たち一度死んだことになるでしょう?新しく始まったの。早く目を覚まして、恋愛の仕方を教えてよ!」

「私はいろんなことができるけど、恋愛だけはできないの。どうやって人を愛せばいいのかわからない。あなたが教えてくれないと、どうやって覚えられるの?」

二見奈津子は抑えきれずに泣き続け、若い看護師も見るに耐えられず、そっと部屋を出て行った。

二見奈津子は佐々木和利の手で自分の手を包み、彼の手の付け根を優しくなでながら:「和利さん、今わかったの。私もあなたを愛してる。誰かをこんなに心配したことなんて今までなかった。和利さん、私、わかったの。目を覚まして、ね?私たち、ちゃんと恋愛しましょう?晴子さんと井上邦夫さんみたいに恋愛しましょう?目を覚まして、目を覚まして、お願い?」