317 挫折

二見華子は怒り狂って机の上のものを全て床に払い落とし、まだ怒りが収まらず椅子を蹴りつけた。つま先から痛みが走り、二見華子は床に崩れ落ち、痛みが和らぐのを待って膝を抱えて泣き崩れた。

先ほど佐藤暁と佐藤彩が大騒ぎを起こしに来て、彼女の二見娯楽の社長という立場も、佐藤家の娘という身分も全く無視していた。

二人は帰り際にも警告を忘れなかった。「佐藤翔の名誉を、佐藤家の名誉を傷つけるようなことをすれば、必ず後悔することになるわよ!」

入り口の従業員たちは震え上がりながら、二人の佐藤さんが颯爽と去っていくのを見送り、誰も彼女を助けに来ようとしなかった。

二見華子は悔しくてたまらなかった。なぜ自分はいつも踏みつけられる側なのか?

橋本拓海はあの日、アシスタントを寄越して彼女と協力の話をさせただけで、途中で佐藤香織が割り込んできて、余計な口出しをし、家でも良い顔をされず、橋本拓海側もプロジェクトを保留にし、伊藤静香というディレクターは、社長が海外出張中だから用件は自分に連絡するように、と言った。

どこが良いというのか?

彼女は協力を機に橋本拓海と付き合いたかったのに!ディレクターと話して何になる?

橋本さんの方も、見舞いに行こうとしたが断られた。二見華子は薄々感じていた。自分は佐藤翔の評判の影響を受けているのだと。結局、佐藤家の娘という立場で橋本家と繋がりを持てたのに、今や佐藤翔の評判は地に落ち、自分まで影響を受けている。

それなのに佐藤家の者は、佐藤翔のスキャンダルの責任まで彼女になすりつけようとしている!

一体どんな厄運に見舞われているのだろう!

谷口安子がドアを開けて入ってきて、驚いた様子だったが、オフィスデスクの後ろに縮こまっている二見華子を見つけると、安心したように見えた。

「社長」谷口安子はティッシュを二見華子に差し出した。

二見華子は顔を上げて谷口安子を見た。化粧は崩れ、表情は歪んでいた。谷口安子は心の中でため息をつき、優しく言った。「美幸から電話があって、急いで戻ってきたんです。どうしてこんなことに?佐藤さんたち、あまりにも理不尽すぎます」