谷口安子はパソコンを抱えてオフィスに戻り、二見華子に関する様々なスキャンダルを詳しく調べ始めた。彼女は二見華子の助けとなって一矢報いなければならない。今や皆が同じ船に乗っているのだから、船が沈めば誰も得をしない。
最も重要なのは、藤原美月が今は二見奈津子の側にいないことだ。二見奈津子には右腕も左腕もない。この機会に動かなければ、いつ動くというのか?
二見華子は佐藤家を後ろ盾にしているとはいえ、その後ろ盾は余りにも不安定だ。彼女のためにもっと頼りになる人を見つけなければならない。
橋本家については、二見華子の様子を見れば分かる。彼女は橋本拓海の心を掴めていない。もっと火をつける必要がある。
橋本拓海は道川光莉が持ってきた企画書を見て感嘆の声を上げた。「これはあなたが考えたの?新しい頭脳は確かに違うね。転職する気はない?クラウドで働くのが嫌になったら、うちの会社に来ないか?給料は倍にするよ、へへ!」
道川光莉は目を丸くして、分厚い眼鏡を押し上げた。「二見社長から聞いたんですが、あなたは佐々木取締役の親友だとか。こんな風に堂々と引き抜きをするなんて、佐々木取締役は知っているんですか?」
橋本拓海は平然とした顔で言った。「それがどうした?佐々木和利の部下だろうが関係なく引き抜くさ!人材を引き止められるかは彼らの腕次第、引き抜けるかは私の腕次第だ。」
道川光莉は考えてから、頷いた。「なるほど。」
道川光莉は心の中で思った。初めて見る、こんなに堂々とした悪党だと。彼女は無意識に再び眼鏡を押し上げた。
「どう?あなたは——道川光莉、うん、転職を考えてみない?」
道川光莉は激しく首を振った。自然な巻き毛の半長髪が彼女をシーズー犬のように見せていた。こんなに自然な醜さを持つ女性を、橋本拓海は初めて見た。
「このアイデアは二見社長が考えたものです。私は単なる実行者です。藤原社長が今体調を崩していなければ、彼女が実行者で、私は藤原社長の代わりに仕事をしているだけです。橋本社長、このプロジェクトは元々自分たちでやるつもりでしたが、二見社長が、もしあなたと協力すれば、あなたの部下に私を指導してもらえて、私も技術を盗み学べるし、彼女も安心できると言ったんです。」