347 罠にかかる

谷口安子はすぐに訂正した。「自嘲は弱さを装うことでも、哀れを装うことでもないわ。分かる?骨の髄まで染み込んだユーモアなのよ!」

二見華子は適当に相槌を打った。谷口安子はため息をつき、教えても身につかないこともあるものだと思った。

「すぐに林千代に連絡して、お茶に誘おうと思います」二見華子は本題を思い出した。

「お見舞いの品を買って病院に行くべきよ。今は義母のベッドの側にいるはずだわ!」谷口安子は再び訂正した。

二見華子は頷いた。「そうですね、やっぱり安子さんは気が利きますね」

林千代は随分憔悴していて、五、六歳は老けて見えた。二見華子は思わず驚いた。

「林さん、本当に大変でしたね」二見華子は相手の立場に立って考え、関口家にとってこんな素晴らしい嫁がいるなんて、本当に運が良いと思った。

林千代は微笑んで、彼女をソファに座るよう促した。「大変なことなんてないわ!義母は実の娘のように私を扱ってくれたの。今私がしていることは、当然すべきことよ。最近はどう?自分のことで忙しくて、しばらく連絡できなかったけど、私のことを思って来てくれてありがとう」

二見華子の心は一気に落ち着いた。周りの人々の中で、林千代のように数言で彼女の心を温かくできる人はいなかった。たとえ林千代に対して警戒心を持っていても、彼女の人への接し方が極めて誠実であることは認めざるを得なかった。

「あまり良くないんです。林さん、実を言うと、橋本拓海は私に冷たくて、もう橋本さんからも誘われなくなりました。きっと私のことを気に入らないんだと思います」二見華子は林千代に対して警戒を解くと、心の内を打ち明けるような依存心が生まれた。

林千代は笑みを浮かべながら彼女を見つめ、目には憐れみの色が浮かんでいた。「お馬鹿さん、橋本拓海は子供の頃から女の子に囲まれて育ったのよ。どんな手管も見てきているわ。真面目一辺倒に近づいて、感動させようなんて、天真爛漫すぎるわ」

二見華子は呆然とした。「じゃあ、どうすればいいんですか?」

林千代は笑いながら携帯電話を取り出した。「斎藤由美さん、私、林千代です」

林千代は二見華子を見ながら、姉のような優しい笑顔を浮かべていた。二見華子は思わず彼女に頼りたくなった。