「ここ数日の株価の異常な動きの原因については、皆さんもご存知のことと思いますので、私からは余計な話はいたしません。ここにいらっしゃる皆様は佐々木氏の功労者であり、株価の変動はありましたが、皆さん揺るぎない立場を保っています」
「しかし、皆様の動揺もよく分かります。これから佐々木氏には前例のない厳しい戦いが待っています。私は説明も、美しい青写真も描きたくありません。私のところでは、去留は自由です」
「二見奈津子は佐々木和利が戻るまでの間、彼の職務を代行します。これは決定事項です。挙手による決議は必要ありません。また、株式の売却をお考えの方は、奈津子に相談してください。良い価格で、損はさせません」
一同は言葉を失った。
呆然と二見奈津子を見つめている。
佐々木敬は立ち上がった。「奈津子、この厄介な状況は君に任せるよ。私は和利の元に戻るから。何年もこの会議室に入っていなかったせいか、頭がクラクラする」
「あっ、佐々木さん——」
「敬さん——」
佐々木敬は後ろからの呼び止める声を無視し、大股で出て行った。
「こ、こ、これは許されない!」ある株主が机を叩き、物を投げつけた。
二見奈津子と長谷川透は静かに座っていた。長谷川透が何度か秩序を維持しようと立ち上がろうとしたが、奈津子に制止された。
二十数分が経過し、騒ぎ疲れた株主たちがようやく冷静さを取り戻し、一斉に二見奈津子を見つめ、非難の言葉を浴びせようとした。
しかし奈津子は皆が話し出す前に口を開いた。「皆様の承認は必要ありません。どうぞ遠慮なさらずに。佐々木氏を去り、株式を売却したい方がいらっしゃれば、ご希望の価格を仰ってください。ビジネスとして話し合いましょう」
「ふん!これは佐々木家が考え出した悪知恵か?佐々木氏を私有化するつもりか?まさか、昔に戻るつもりか?」
「そうだ!我々の株を買う?君に買える金があるのか?我々を何だと思っている?外の一般株主と同じだと?」
「この物言いを聞いてみろ、傲慢すぎるじゃないか?佐々木敬は若造を前面に出して我々の口を封じようというのか?」
「本当にビジネスとして話し合うというなら構わないが?それなら思い切って法外な値段を吹っかけてやろう。君にどれだけの資本があるか見てみたいものだ!」