「ここ数日の株価の異常な動きの原因については、皆さんもご存知のことと思いますので、私からは余計な話はいたしません。ここにいらっしゃる皆様は佐々木氏の功労者であり、株価の変動はありましたが、皆さん揺るぎない立場を保っています」
「しかし、皆様の動揺もよく分かります。これから佐々木氏には前例のない厳しい戦いが待っています。私は説明も、美しい青写真も描きたくありません。私のところでは、去留は自由です」
「二見奈津子は佐々木和利が戻るまでの間、彼の職務を代行します。これは決定事項です。挙手による決議は必要ありません。また、株式の売却をお考えの方は、奈津子に相談してください。良い価格で、損はさせません」
一同は言葉を失った。
呆然と二見奈津子を見つめている。
佐々木敬は立ち上がった。「奈津子、この厄介な状況は君に任せるよ。私は和利の元に戻るから。何年もこの会議室に入っていなかったせいか、頭がクラクラする」