374 暴露

二見奈津子が部屋に戻ると、佐々木光は会議を終えて、目を閉じて深く考え込みながら、手の中の携帯電話を弄んでいた。

「うまくいかなかったの？」二見奈津子は静かに尋ねた。

佐々木光は声を聞いて目を開け、彼女に向かって薄く微笑んだ。「いや、うまくいったよ。和利がすぐに戻ってくる」

二見奈津子は思わず喜んだ。「本当？それは良かった」

ずっと気がかりだった心配が、やっと解消された。

佐々木光は二見奈津子を見つめ、少し躊躇してから口を開いた。「奈津子、和利が今回切り抜けられたのは、ある人のおかげなんだ」

「そう？じゃあ、その方にはしっかりお礼を言わないと」二見奈津子は笑顔で答えた。

佐々木光は心の中でため息をつき、「二見華子だよ」と言った。

二見奈津子は凍りついた。

二見華子は甘く微笑みながら、佐々木和利の腕に抱きついた。「光お兄さん、家まで送ってくれてありがとう！」

佐々木和利は平然と腕を抜き、冷ややかに言った。「車に乗りなさい」

二見華子の顔には隠しきれない落胆の色が浮かんだ。

佐々木和利が大股で先に歩き出すと、鈴木龍が追いついて小声で言った。「大将は人との身体接触が一番嫌いなんですよ。知らなかったんですか？特に今みたいに突然触られるのは。あなたを投げ飛ばさなかっただけでも、すごく優しく接してくれたってことですよ！」

二見華子は愕然とした。「本当？」

鈴木龍は『絶対に信じてください』という表情を浮かべた。

二見華子は安堵し、鈴木龍に向かって笑顔で言った。「ありがとう！」

鈴木龍は彼女の笑顔に目を奪われ、一瞬呆然としていると、ちょうど追いついてきた亮平に蹴られた。「何してんだよ？早く行くぞ！」

二見華子の後ろ姿を見つめながら、鈴木龍はため息をついた。

亮平は注意を促した。「その気持ちは抑えろよ！大将の態度見ただろ？もしこの娘に問題がなくて、いい子なら、俺たちに紹介するはずだろ？そんな気配あったか？俺は彼女たちを連れてきたあの阿部さんも怪しいと思うぞ！」

鈴木龍は黙っていた。彼も心の中では分かっていたが、それでも惜しい気持ちは拭えなかった。

佐々木和利は二見華子と同じ車で空港に向かうことはなかったが、飛行機の中では隣同士の席になり、二見華子は満足げな表情を浮かべていた。

この時、彼らはすでに私服に着替えていた。