373 出会い

向井輝は高熱を出し、痛みで時折震えていた。彼女の傷口は複数箇所で炎症を起こしており、鞭打たれた後に傷口にかけられた水が不潔だったため、多くの箇所で感染していた。

二見奈津子は拳を強く握りしめ、佐々木理恵は傍らで涙を拭っていた。

二見奈津子は藤原美月に言った。「晴子さん、あなたと理恵さんはここで向井輝の看病を続けてください。私は兄の様子を見に行かなければなりません。」

藤原美月は頷いた。「安心して、ここは私たちに任せて、あなたは行ってきて。」

二見奈津子は少し疲れた様子でエレベーターの壁に寄りかかり、静かに目を閉じた。

佐々木光の二度目の手術は終わり、そろそろ目覚める頃だろう。様子を見て向井輝のことを伝えよう。

佐々木和利からの連絡が突然途絶えてしまい、進展や安否がわからず、二見奈津子は考えるのが怖くなった。

佐々木グループでは、田中希美と長谷川透の助けを借りて状況を安定させ、海外からの謎めいた黒幕も発見した。この黒幕は各財閥や企業グループに深く浸透しており、一時はどこから手をつければいいのか分からない状態だった。

クラウドでは、佐々木理恵のドキュメンタリーの反響が良く、急いで続けなければならず、多くの後続作業が待っていた。

まさに千頭万緒だった。

「ピン」とエレベーターのドアが開き、二見奈津子は反射的に目を開けた。片手をポケットに斜めに入れた若い男性が入ってきて、二見奈津子の視線に気付くと、唇を曲げて微笑んだ。

とても美しい男性だった。かっこいいというよりも、どこか女性的な美しさで、笑顔には何か取り入るような雰囲気があった。

二見奈津子は礼儀正しく軽く頷き、視線をそらした。エレベーターが再び止まると、佐々木光のいる階に着き、彼女は降りた。背後から自分に張り付いていた視線には気付かなかった。

佐々木光は目を覚まし、先ほど医師と看護師が各種検査を行い、専用の機器で仲間と連絡を取ろうとしていた。二見奈津子が来るのを見て、頷いて見張りを頼む合図をした。

二見奈津子は了解し、外に出て周囲の状況を確認した。エレベーターで一緒だった男性もこの階に来ており、病室の前で看護師と話をしていた。

二人の視線が空中で交差し、男性は唇を曲げて微笑んだ。二見奈津子は視線をそらし、静かに看護師に薬品リストを頼んだ。