「どうしてここを見つけたの?どうして次から次へと、みんな反抗的になるの?阿部さん、もう彼女を苦しめないで。もし何か起きたら、私はあなたを守れないわ!先に斎藤由美に何があったのか見てくる!」
「聖司さん、大変です!一団が押し入ってきました!」
耳元で混乱した声が響いていたが、次第に遠ざかっていく。向井輝はもう持ちこたえられず、意識を失う直前に、心の中でそっとため息をついた。
この世には、本当に因果応報があるのだ!
「輝!」二見奈津子は叫び声を上げ、血まみれの向井輝に飛びつくように抱きついた。
「救急車!救急車を呼んで!」二見奈津子は声を失いそうに叫び、その声には極限まで恐怖が滲んでいた。
外は混乱の渦中で、格闘の音、うめき声、悲鳴が、次々と響き渡っていた。
斎藤由美は大柄な男に両手を後ろに捻じ上げられ、もがきながら二見奈津子が救急隊員と共にストレッチャーを運び出すのを見た。ストレッチャーの上には血まみれの人が横たわっていた。