369 故意

三人は三階の個室に座り、一階のホールの喧騒を見下ろしていた。その距離感が、まるで衆生を見下ろすような優越感を与えていた。

佐々木理恵は頬を膨らませ、まるで火薬を詰め込んだ小さな爆弾のようだった。

「理恵ちゃん、せっかく来たんだから好きにやっていいわ。ただし、あなたは公人だから、炎上だけは避けてね」と二見奈津子は佐々木理恵に注意した。

佐々木理恵は少し驚いて「お義姉さん、私が来なかったらどうするつもりだったの?元の計画は?」

二見奈津子が微笑んでまだ何も言わないうちに、藤原美月は佐々木理恵の頭を軽く叩いて「彼女はね、様子を見に来ただけよ。あなたが来なかったら、多分彼女自身が騒ぎを起こすつもりだったんでしょう。今はその機会をあなたに譲れるわ!」

佐々木理恵は唇を引き締め、袖をまくり上げながら「分かりました、お義姉さん!私に任せてください!」

藤原美月は少し心配そうに「向井輝が本当に彼女の手中にいるなら、向井輝に危害が及ぶんじゃないかしら?」

二見奈津子はそっと息を吐いて「彼女は向井輝の命を危険にさらすようなことはしないと思うわ。私たちと同じように、彼女も佐々木和利のことを考えて慎重にならざるを得ないでしょうから」

藤原美月は考え込むように頷き、その理屈に納得した様子だった。

「私は前から言っていたでしょう。佐々木家は手ごわい相手だって!佐々木和利がいなくても、佐々木家は簡単には手を出せない相手だって!私の言うことを聞かなかったから、今こんな窮地に追い込まれているんでしょう?」と斎藤由美は冷笑しながら言った。

「今さらそんなことを言っても仕方ないでしょう。当面の急務は佐々木家を押さえることです。そうしなければ、私たちの損失が大きすぎます!」電話の向こうの声は焦りを帯びていた。

「私に何とかしろって言うの?私にはどうしようもないわ!私に何ができるっていうの?まさか佐々木家のお嬢様を誘拐して脅すとでも?」斎藤由美は容赦なく言い返した。

相手は黙り込んだ。

斎藤由美が電話を切ろうとした時、相手が突然「それも一つの手かもしれませんね」と言った。