二見奈津子は立ち上がった。
傍らの若い看護師が言った。「お爺さんが私たちの目を盗んで、自分で外に散歩に出かけて、病室が分からなくなってしまったんです。二見さんが送り届けてくださって助かりました。」
青木大輔の視線は、氷のように冷たくその若い看護師を見つめ、看護師はすぐに頭を下げた。
青木お爺さんは二見奈津子に声をかけることに夢中だった。「お嬢ちゃん、まだ大輔のことを怒ってるのかい?爺さんが彼をぶん殴って気持ちを晴らしてやろうか?彼のことは気にしないでおくれ!あいつはただの役立たずで物分かりが悪いんだ。」
二見奈津子は笑いながら言った。「お爺さん、私は怒っていませんよ。あなたがおとなしく言うことを聞いてくれたら、次回はあなたの好きなお菓子を持ってきて会いに来ますね!」
青木お爺さんは少し焦った様子で「もう行くのかい?爺さんと一緒にいてくれないのかい?」
青木大輔は前に出て、立ち上がろうとするお爺さんを押さえた。「お爺さん、遥香ちゃんを授業に戻らせてあげてください。遅刻すると罰則があって、彼女は泣いてしまいますよ。」
青木お爺さんはすぐに言った。「じゃあ行きなさい、早く行きなさい。大輔、誰かに遥香ちゃんを送らせなさい。彼女は運転が下手だから、心配だ。」
「分かりました!おとなしく横になっていてください。今すぐ彼女を送らせます。授業が終わったら、また彼女をここに連れてきますから!」
青木お爺さんは非常に協力的で、慈愛に満ちた様子で手を振って二見奈津子に早く行くよう促した。
青木大輔は深く感慨に浸りながらため息をつき、情熱的に二見奈津子を見つめた。「どうお礼を言えばいいのか分からないよ。祖父は年を取って、記憶が混乱しているんだ。医者によれば、これからますます悪化するだろうと言われている。時々、——とても怖くなるんだ。彼をこんなに喜ばせてくれて、ありがとう。」
二見奈津子は礼儀正しく微笑んだ。「たまたま出会っただけで、たまたまお爺さんが私を別人と間違えたので、お連れしただけです。年を取ると、そういうこともありますよね、理解できます。」
青木大輔は少し申し訳なさそうに二見奈津子と一緒に歩きながら「どこへ行くの?」と尋ねた。