439 乾杯

乾杯の儀式で披露宴の雰囲気が盛り上がり、橋本拓海の場を和ませる演出でさらに笑い声が溢れ、来賓たちは大いに楽しんでいた。

藤原美月が望美一家を見るまでは。

藤原美月の顔から笑顔が凍りついたように一瞬で消え、グラスを持つ手が宙に固まった。

二見奈津子は事情がわからず、橋本拓海に来賓の紹介を促した。彼女はすでにグラスを持ち上げ、佐々木理恵は藤原美月のグラスにスプライトを満たし、藤原美月が乾杯するのを待っていた。

橋本拓海は笑いながら言った。「こちらは——」

「私の結婚式に来てくれてありがとう!」藤原美月は橋本拓海の言葉を遮り、一気にグラスのスプライトを飲み干した。

井上邦夫は藤原美月の感情の変化を感じ取り、急いでもう一方の手を彼女の腰に添えた。

この保護的な仕草に藤原美月の感情の波は瞬時に落ち着き、彼女は井上邦夫の手を取り、冷静に言った。「こちらは私の母、望美さんです。そしてこの方々は彼女の継子たちで、天満姓ですが、私もあまり詳しくないので名前も言えません。まあ、関係もないことですし。せっかく来たのですから、乾杯しましょうか。」

井上邦夫はそれを聞いて、望美にグラスを軽く掲げ、一気に飲み干してから言った。「ご列席ありがとうございます。」

井上邦夫の辞書では、藤原美月が好きなものは全て良いもので、藤原美月が好きでないものは何の価値もないのだった。

佐々木和利と二見奈津子も同様にグラスの酒を飲み干し、丁寧にお礼を言った。

望美は藤原美月を見つめ、彼女の冷淡さに傷ついたようで、委屈そうに言った。「こんな風に私を扱うの?私はあなたの実の母親よ!あなたの結婚式に来たのに、主賓席にも座れず、冷たい顔をされて嫌われるなんて、一体私はあなたにどれだけ借りがあるというの?」

「どれだけあなたに借りがあっても、私はあなたの母親よ!あなたをこの世に連れてきた人間よ!この世界であなたと同じ血を分けた唯一の人間よ!あなたはそんなに冷酷なの?」

望美はそう言いながら、涙を瞳に浮かべ、ひどく委屈そうな様子だった。