第13章 佐藤正志が熱を出す

彼は大阪市に来たのか?原作ではこの時期の脇役についてあまり描写がなく、佐藤和音でさえなぜこの時期に彼が大阪市に現れたのか分からなかった。

原作での彼の結末や、主人公との争いがどのように決着したのかを佐藤和音は知らなかった。なぜなら、佐藤和音が死ぬシーンを読んだ時に実験室で事故が起き、この世界に来てしまったからだ。

佐藤和音が知っているのは、この人物の気性が荒く、評判も良くないということだった。

気まぐれで、結果を考えずに行動する。何事にも関心を示さず、自分の命すらも顧みない。

彼は死を恐れないが、家族が彼の死を恐れている。

東京の社交界では「天も地も恐れないが、秋次おじいさんが胸が痛いと言い出すのが一番怖い」という言葉があった。

秋次おじいさんが胸が痛いと言えば、菊地家は大騒ぎになり、他の人々も安寧を失うのだった。

お茶を飲み終わる頃には夜も更けており、佐藤おばあさんはまだ佐藤和音を帰そうとしなかった。

「岡本治美は直樹の世話があるし、あなたは会社が忙しくて手が回らないでしょう。おりこをここに置いていったらどう?」佐藤おばあさんは佐藤和音を引き止めようとした。

「正志は和音に家庭教師を付けましたから、毎日勉強を教わらないといけないんです。」

「その家庭教師の先生にここに来てもらって教えればいいじゃないの?」おばあさんにとってはそれは問題ではなかった。何よりもおりこが大切だったから。

「お母さん——」佐藤賢治は困った表情で、助けを求めるように佐藤おじいさんを見た。

和音はここ数日やっと少し素直になってきたところなのに、今おばあさんに預けて甘やかされたら、また元に戻ってしまうのではないかと。

「まあまあ、和音に会いたければ、週末に二日ほど連れてくればいい。」

佐藤おじいさんが口を開き、おばあさんの考えを諭して、佐藤和音を家に帰らせることにした。

###

その後の数日間、佐藤和音は家にこもり、兄の書斎か自分の書斎で千葉佳津の指導を受けて過ごしていた。

ある朝、佐藤正志は目覚めた時から頭が重く足取りが軽く、喉は火のように熱く、話そうとしても掠れた声しか出なかった。

佐藤正志は体が熱っぽいのを感じた。

佐藤正志は風邪で熱を出したのだろうと考え、最近流行しているインフルエンザにかかったのかもしれないと思った。

この時間、父はすでに会社に行っており、母は病院で直樹の看病をしていた。

佐藤正志はもう一度横になることにした。少し横になれば楽になるかもしれないと思って。

うとうとしている間に、部屋のドアが開き、小柄な人影が入ってきた。

そっと近づいてきて、柔らかな小さな手が彼の額に触れた。

ぼんやりと佐藤正志はそれが妹の佐藤和音だと分かった。

ただ、何をしようとしているのかは分からなかった。

しばらくすると、佐藤和音は部屋を出て行った。

佐藤正志は彼女が行ってしまったと思ったが、すぐに佐藤和音は戻ってきた。

手に何かを持っていた。

そして冷たいものが彼の額に置かれ、佐藤正志はようやくはっきりと目が覚めた。

ベッドの傍らで忙しそうにしている姿を見て、佐藤正志の目は不思議そうで好奇心に満ちていた。

佐藤和音は解熱剤と抗炎症薬を佐藤正志に差し出した。

「どうして僕が病気だと分かったの?」

佐藤正志は喉が痛く、声を出すのも困難で、一言話すだけで全身の力を使い果たすようだった。

「お兄ちゃんが早起きしなかったから。」

佐藤正志の生活リズムはとても規則正しく、毎日同じ時間に起きていた。