第15章 ヒロイン原詩織

申請した七日間の休暇はあっという間に五日が過ぎ去り、この間、佐藤和音は忙しく過ごしていた。

毎日必ず訪れる千葉佳津への対応の他、佐藤和音はパソコンや携帯電話などの通信機器を頻繁に使用して、誰かと連絡を取り合っていた。

佐藤和音が今やるべきことは二つあった。一つ目は、佐藤直樹の手を治療し、彼が将来暗い性格になって彼女や佐藤家全体の不安定要素となることを防ぐこと。

二つ目は、消失した監視カメラの映像を見つけることだ。この二日間で佐藤和音は、佐藤直樹が事故に遭った場所に監視カメラがあったことを突き止めたが、関連する映像記録はすでに消えていた。

佐藤家の者たちはこの問題に気付いておらず、事件が起きた廊下に監視カメラがあったことすら知らなかった。佐藤直樹の証言があれば十分だと考えていたからだ。

以前の佐藤和音も監視カメラのことは考えもしなかった。家族に一度説明した後は、それ以上話したがらなかった。

むしろ反抗心から家族に向かって叫んでいた。「そうよ、私が押したのよ!私を捕まえて閉じ込めればいいじゃない!それとも私の手を切り落として償えばいいの!」

今日、佐藤正志は佐藤和音を一日休ませた後、彼女を病院に連れて行って佐藤直樹を見舞う予定だった。

外出する時、佐藤和音は小さなリュックを背負っていた。膨らんでいて、たくさんの物が入っているようだった。

佐藤正志はそれを見たが、詳しくは聞かなかった。女の子がリュックを背負うのは普通のことだからだ。

佐藤正志が車を佐藤家から出したところで、道端でバスを待っている原詩織を見かけた。

今日は週末で、原詩織は休みで家にいた。

彼女は手に弁当箱を持っていて、それは佐藤直樹のために用意したもののようだった。

佐藤家は山の中腹の高級住宅地にあり、ここはバスの便が少なく、一日に数本しか通っていなかった。

佐藤正志は車を止め、窓を下ろした。

「乗りなよ」

後部座席に座っていた佐藤和音は初めて原詩織を見た。原作の描写通り、清楚で魅力的な容姿をしていた。

小顔で、涼しげな目元、際立つ顔立ちながら、親しみやすい印象を与えていた。

佐藤和音とは違っていた。和音は顔立ちが精緻すぎる上、性格が強く執着的で、一目見ただけで近寄りがたい印象を与えていた。

「お坊ちゃま、私は自分でバスに乗って行きますから……」原詩織は慎重に佐藤正志の誘いを断った。

彼女の声は甘く清らかで、優しく礼儀正しかった。

「私たちも病院に行くし、道も同じだ。それに、弟に冷めた食事を食べさせたくない」佐藤正志は率直に言った。

佐藤正志のその言葉を聞いて、原詩織は断る理由がなくなり、車に乗り込んだ。

車に乗り込んだ時、原詩織は佐藤和音が後部座席に座っているのを見た。和音の隣には衣類の山が積まれていて、それは病院にいる二人のために持って行くものだった。

助手席だけが空いていたので、原詩織は仕方なく助手席に座った。

道中、佐藤正志はずっとルームミラーを通して後ろに座っている佐藤和音の表情を観察していた。

この一件は原詩織が原因で起きたことだ。もし佐藤和音が本当に改心したのなら、今原詩織に対して怒りの表情を見せるべきではない。

佐藤正志は佐藤和音の怒りの表情を見ることはなかった。彼女は携帯電話を見ながら下を向いていて、とても集中している様子で、何を見ているのかわからなかったが、まるで原詩織が乗車したことにも気付いていないかのようだった。

佐藤正志は佐藤和音の反応にまずまず満足していた。

続いて佐藤正志は原詩織に佐藤直樹に関することをいくつか尋ねた。

佐藤正志はここ二年ほとんど家に帰っておらず、弟のことについては時として原詩織の方がよく知っていた。

原詩織は一つ一つ答え、二人はかなり話が合っていた。