第36章 私のおりこを私が可愛がる

佐藤賢治と岡本治美は別れを惜しんでいた。この点について和音は分かっていた。

彼女が読んだ原作の中でも、この場面は起きていたからだ。

もちろん、元の和音の反応はとても激しく、大泣きして大騒ぎをした。

最終的には佐藤賢治と岡本治美が心を痛め、和音を本邸に送ることはなかった。

しかし結果は残酷だった。佐藤家に戻った佐藤直樹と和音は、佐藤家の頭上に吊るされた二本の剣のようだったからだ。

二人の対立は激化の一途をたどり、佐藤家全体が深い苦しみに陥った。

そのような結果を考えると、和音は従順に本邸で一時的に過ごすことを選んだ。

翌朝早く、佐藤正志が和音の荷物を本邸に届ける前に、おばあさんが先に来た。

まだ朝の八時過ぎで、佐藤賢治もまだ出かけていなかった。

「お母さん、どうしてわざわざ?運転手に来てもらうか、後で正志が届けるつもりでしたのに」

おばあさんは意図的に佐藤賢治を無視し、まっすぐ中に入って和音の部屋の前に置かれた荷物を見つけ、運転手に車に積むよう指示した。

「お母さん、怒らないでください。この件については私も治美も他に方法がなくて…」

佐藤賢治は母親が怒っているのを知っており、表情は無力さと苦さに満ちていた。

「私はあなたたちが間違っているとは言っていないわ」おばあさんは顔を引き締め、息子に良い顔色一つ見せなかった。「あなたたちには苦衷があり、理由もある。それは理解しているわ。でも私が小さい頃から育てた大切な孫娘を心配するのも間違いじゃないでしょう?あなたたちが気遣えないなら、この老婆が心配するくらいさせてもらえないの?」

「はい、はい、分かっています。和音のことをしばらくお願いします」佐藤賢治は昨夜の和音の従順な様子を思い出し、胸が痛んだ。

「お願いなんかされなくても!私は嬉しいのよ!いっそのこと、もう戻さなくていいわ。この老婆が育てればいいの」

おばあさんは心中穏やかでなく、言葉も当然優しくはなかった。

佐藤賢治はただ黙って叱責を聞くしかなかったが、ずっとおばあさんに任せるわけにはいかないと思っていた。佐藤直樹の態度が和らいだら和音を迎えに行くつもりだった。