第36章 私のおりこを私が可愛がる

佐藤賢治と岡本治美は別れを惜しんでいた。この点について和音は分かっていた。

彼女が読んだ原作の中でも、この場面は起きていたからだ。

もちろん、元の和音の反応はとても激しく、大泣きして大騒ぎをした。

最終的には佐藤賢治と岡本治美が心を痛め、和音を本邸に送ることはなかった。

しかし結果は残酷だった。佐藤家に戻った佐藤直樹と和音は、佐藤家の頭上に吊るされた二本の剣のようだったからだ。

二人の対立は激化の一途をたどり、佐藤家全体が深い苦しみに陥った。

そのような結果を考えると、和音は従順に本邸で一時的に過ごすことを選んだ。

翌朝早く、佐藤正志が和音の荷物を本邸に届ける前に、おばあさんが先に来た。

まだ朝の八時過ぎで、佐藤賢治もまだ出かけていなかった。

「お母さん、どうしてわざわざ?運転手に来てもらうか、後で正志が届けるつもりでしたのに」