大阪市東城区、半山の別荘地区。
ここには古典的で壮大な建物が二棟だけあり、一棟は上杉家、もう一棟は佐藤家のものだった。
この二家は大阪市でも指折りの名家で、いずれも長い歴史を持っていた。
今、二つの別荘の前の道路で小さな事故が起きていた。一台の車が別の車に追突したのだ。
けが人はいなかったが、道路が塞がれてしまった。
帰宅しようとしていた佐藤おばあさんと佐藤和音は道路で足止めを食らった。
家まであと少しだったので、佐藤おばあさんは佐藤和音の手を引いて歩いて帰ることにした。
和音が事故現場を通り過ぎる時、衝突した二台のスポーツカーを目にした。
後ろの車は派手な赤色で、前の車はさらに派手な緑色だった。
緑のスポーツカーの運転手は今、車の窓に寄りかかっていて、その姿は何となくだらしなく見えた。