上杉望はにこにこと佐藤和音に言った。「和音ちゃん、そんな気持ちを持ってくれるだけで十分よ。秋次おじいさんは何も困ってないわ」
実は秋次おじいさんにも足りないものがあった。ただし、それは今の菊地家も天興グループも見つけられていないものだった。この小娘にも手伝えるはずがない。
「私にはたくさんのことができます」と佐藤和音は強調した。
上杉望はもちろん佐藤和音のこの言葉を真に受けなかった。
和音ちゃんがそんな気持ちを持っているのは良いことだけど、秋次おじいさんのことで彼女に手伝えることなんてあるはずがない。
菊地秋次は突然立ち上がり、佐藤和音の前まで歩いてきた。
両手をズボンのポケットに入れたまま、見下ろすように佐藤和音を見た。
「お前の身長は俺のどこまでだ?」
「肝臓の位置です」