第50章 彼女は休息が必要

上杉望は佐藤和音に尋ねた。「この二冊のノートをどう使えばいいか分かっているの?」

佐藤和音の様子を見て、上杉望は不安を感じていた。

二冊のノートを抱えたまま山田燕と勘定を清算しに行くなんて愚かなことはしないでほしい。山田燕の賢さを考えれば、この二冊のノートだけでは彼女を追い詰めることはできないだろう。

佐藤和音がそんなことをすれば、もっと大きな危険を招くかもしれない。

「分かってます」

佐藤和音は確信に満ちた口調で、真面目な様子で答えた。

しかし、彼女の体つきが与える柔らかくて可愛らしい印象は否めなかった。

上杉望はどう見ても頼りなく感じた。「やっぱりこの二冊のノートは私が預かっておいた方がいいんじゃない?何かあったら私に相談に来てくれれば」

「結構です」佐藤和音は躊躇なく断った。

「じゃあ...気をつけてね」上杉望は注意を促した。彼は本当に佐藤和音が単純すぎて、逆に誰かに害されることを心配していた。

菊地秋次は佐藤和音を見てから言った。「上杉に客室を用意してもらって休んだらどう?」

佐藤和音は再び菊地秋次に疑問の眼差しを向けた。

「どうしたの?それともパーティーに参加したい?」

「いいえ」

菊地秋次の声は優しいとは言えないが、それなりに辛抱強かった。「じゃあ休みなさい。目に充血が見えるよ。自分をウサギだと思ってるの?」

ウサギこそ目が赤いのに。

菊地秋次は佐藤おばあさんに次いで、佐藤和音が最近睡眠不足であることに気付いた二人目の人物だった。

「充血?本当?」上杉望は急いで佐藤和音の前に寄って確認しようとした。

上杉望は佐藤家から上杉家まで来る間、佐藤和音の目に充血があるかどうか気付いていなかった。

上杉望が近づくと、佐藤和音は後ずさりした。

距離が近すぎると彼女は不快に感じるのだ。

上杉望がよく見る前に、菊地秋次に引っ張り戻された。

「早く部屋の手配をしろ」菊地秋次は目を細め、不機嫌そうな表情を見せた。

「執事に頼みます」上杉望は執事を呼び、佐藤和音を客室に案内させた。

残された上杉望は菊地秋次の傍らに座り、好奇心いっぱいに尋ねた。

「秋次おじいさん、不思議なんですけど、なぜあの子をそんなに助けるんですか?疲れてないかまで気にかけて」

「昔飼っていたペットに似ているからだ」