そのとき上杉望が出てきて、「下がっていいよ。隼人と話すから」と言った。
「はい」執事は急いで退室した。
佐藤隼人は上杉望を見ると、遠慮なく「和音は?」と尋ねた。
「妹さんは最近勉強で疲れているみたいで、朝早く来た時には目が充血していたから、客室で休ませているんだ」
「上杉、嘘をつくなよ」
「隼人、どうして私まで信用できないの?」
上杉望は自分の信用がそんなに低いのかと思った。
「あなたを信用していないわけじゃない」
あなたの家に住んでいるあの人を信用していないだけだ。
後半の言葉を佐藤隼人は口に出さなかったが、上杉望には分かっていた。
上杉望は佐藤隼人の肩を叩き、小声で耳元に囁いた。「安心して、彼は女性に手を出さないし、和音には特に何もしないよ」
秋次おじいさんが女性に手を出すようなら、菊地家もそんなに焦って催促したりしないだろう。