第67章 プレゼント(2)

指紋認証で大きな黒い鉄門を通り抜けると、佐藤和音は中庭に駆け込んだ。

別荘の玄関まで走り、紙袋を置いてすぐに車に戻った。

「おりこは何を置いてきたの?」佐藤おばあさんは車の中からでも、佐藤和音が家の中に入らなかったのが見えた。

「誕生日、プレゼント。」

それを聞いて佐藤おばあさんは少し考え込み、明日が孫の佐藤正志の誕生日だということを思い出した。

最近いろいろなことが起きて、賢治と岡本治美も正志の誕生日のことまで気が回らないだろう。

和音が覚えていたとは思わなかった。

「どうして兄さんに誕生日プレゼントを贈ろうと思ったの?」佐藤おばあさんは優しく微笑みながら尋ねた。

おばあさんは心が慰められた。おりこがプレゼントを贈るようになったということは、心の中がそれほど辛くなくなったということだから。