第67章 プレゼント(2)

指紋認証で大きな黒い鉄門を通り抜けると、佐藤和音は中庭に駆け込んだ。

別荘の玄関まで走り、紙袋を置いてすぐに車に戻った。

「おりこは何を置いてきたの?」佐藤おばあさんは車の中からでも、佐藤和音が家の中に入らなかったのが見えた。

「誕生日、プレゼント。」

それを聞いて佐藤おばあさんは少し考え込み、明日が孫の佐藤正志の誕生日だということを思い出した。

最近いろいろなことが起きて、賢治と岡本治美も正志の誕生日のことまで気が回らないだろう。

和音が覚えていたとは思わなかった。

「どうして兄さんに誕生日プレゼントを贈ろうと思ったの?」佐藤おばあさんは優しく微笑みながら尋ねた。

おばあさんは心が慰められた。おりこがプレゼントを贈るようになったということは、心の中がそれほど辛くなくなったということだから。

「彼女が、贈るって。」

今の佐藤和音ではない。

事故が起きる前の佐藤和音。

佐藤正志が帰国する前、佐藤和音はネットで投稿して意見を求めていた:

【兄の誕生日が近いんだけど、何を贈ったらいいかな。どうしたら誠意が伝わるかな。追記:兄は何も不自由してないと思う。】

後にネットユーザーからアドバイスをもらったが、ほとんどのアドバイスは佐藤和音には役に立たなかった。

佐藤和音にはほとんどできないことばかりだった。

最後にあるユーザーのアドバイスを採用して、兄のためにマフラーを手編みすることにした。

この佐藤和音にもできないことだったが、ユーザーの話を聞く限り、そんなに難しくなさそうだった。

佐藤和音の最後の返信:【もういいや!きれいに編めてもへたくそでも、お姉様の私からのプレゼントだから受け取ってもらうしかないの!文句言ったら家に入れないからね!╭(╯^╰)╮】

佐藤おばあさんは佐藤和音の頭を撫でた:「和音はいい子ね。あなたが立ち直ってくれて、おばあちゃんはとても嬉しいわ。おばあちゃんはただあなたが楽しく過ごせればいいの。辛いことは、もう過去のことにしましょうね。」

佐藤和音は小さく頷いた。

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夕食時、佐藤邸では皆が同じテーブルで食事をしていた。

原詩織は学校で出された宿題を、ずっと学校に来ていない佐藤直樹に持ってきて、最近の学習内容も教えて、佐藤直樹の補習を手伝った。