第68章 贈り物(3)

原おばさんがそう考えたのには理由があった。

佐藤邸を自由に出入りできるのは、佐藤家の者以外では、彼女と安田おばさんという二人の使用人と、娘の原詩織だけだった。

このものは、ここにいる佐藤家の者が用意したはずがない。彼らには玄関に置く必要がないのだから。

となると、残る可能性は娘の原詩織しかいない。

そして、プレゼントは以前娘と話していたものにぴったり合っていた。

原おばさんは佐藤和音が佐藤邸に戻ってくる可能性を全く考えていなかったし、このような状況で兄にプレゼントを贈るとは更に思いもよらなかった。

原おばさんの認識では、佐藤和音のお嬢様気質からすれば、佐藤正志が自ら機嫌を取りに行っても上手くいかないかもしれないのに、まして自ら佐藤正志に誕生日プレゼントを持ってくるなんてありえないと思っていた。

なぜプレゼントを玄関に置いて、直接お坊ちゃまに渡さなかったのかというと、それはおそらく娘が恥ずかしがったからだろう。あの日、娘にプレゼントを用意するように言った時も、娘は何度も断っていたのだから。

原詩織は母親が満面の笑みを浮かべているのを見て、これは母親が買ってきたものだと推測した。

おそらく母は、最近の彼女の学業の忙しさを知っていて、今日までプレゼントが用意できていないことを察して、勝手に既製品を買い、それを彼女の手作りだと偽ったのだろう。

既製品を自分の手作りと偽るのは、原詩織としてはよくないと感じた。

母は事前に相談すべきだった。今となっては、とても気まずい状況になってしまった。

でも結局は母の好意なのだし、母は彼女のためを思ってそうしたのだから……

そして今、本当のことを言えば、母は必ず恥ずかしい思いをするだろう。

原詩織は少し悩んだ末、ゆっくりと頭を下げた。

否定しないことは、認めることに等しかった。

原詩織が頭を下げたのを見て、恥ずかしがっているのだと思った。

岡本治美もようやく明日が長男の誕生日だということを思い出した。

この数日間、岡本治美は本家にいる娘と次男のことで頭がいっぱいだった。

長男のことを疎かにしていて、他人に長男の誕生日が近いことを気付かされるとは。

岡本治美は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

佐藤直樹はここ数日相変わらず元気がなかったが、兄の誕生日と聞いて、兄への誕生日の祝福だけは述べた: