食事の後、佐藤正志はコーヒーを飲みたいと言い、安田おばさんに淹れてもらって書斎に持ってくるように頼んだ。
原おばさんとは違い、安田おばさんは佐藤家での勤務歴がはるかに長かった。
岡本治美が小さい頃から、安田おばさんは岡本家で治美の世話をしていた。
その後、治美が佐藤賢治と結婚したことで、安田おばさんも佐藤家で働くようになった。
最初、佐藤邸には安田おばさん一人だけが住み込みの使用人だったが、後に安田おばさんの年齢が上がり、体力が徐々に衰えてきたため、治美は比較的若い家政婦をもう一人雇って安田おばさんの負担を軽減することにした。
こうして安田おばさんは台所の仕事だけを担当し、他の掃除などの仕事は原おばさんが担当することになった。
安田おばさんは生涯独身で、治美と子供たちを自分の家族のように思っていた。
佐藤家の四人の子供たちの成長を見守ってきたため、正志は彼女を信頼していた。
安田おばさんが書斎に来ると、正志は尋ねた。「安田おばさん、原おばさんはどんな人ですか?」
原おばさんが佐藤家で働き始めたのは、正志が大学に入ってからのことで、その後正志は家にいる時間が少なくなっていた。
「それは…」安田おばさんは言葉に詰まった。
「安田おばさん、私はあなたを信頼しています。あなたは私たちの家族同然です。思っていることを率直に話してください。」
「特に何もないんですが、よく働きますし、手際もよく、怠けることもありません。ただ、時々話す内容が少し…」
「少し何ですか?」
安田おばさんはうまく表現できず、先日聞いた内容を直接正志に話した。「先日、三男様の書斎に様子を見に行った時、ちょうど原おばさんが下りてこない三男様に食事を届けていて、原おばさんが三男様に、手の回復は望めないけれど他のことを考えてみてはどうか、と言っているのを聞きました。それに、奥様がとても辛い思いをしていて、お嬢様のことばかり気にかけているとも言っていました。」
安田おばさんは、原おばさんの言葉が間違っているとは言えなかった。確かに事実を述べていたのだから。
しかし安田おばさんは、傷ついたばかりの子供の前でそのような話をすべきではないと常々感じていた。