第71章 引き取りたい?だめだ!

佐藤正志が呆然としている間に、佐藤和音はケーキを佐藤正志の横のテーブルの隅に置くと、自分の用事に戻っていった。

佐藤正志は放っておかれた。

佐藤正志は和音の書斎にしばらく居続け、その間に和音が渡してくれた小さなケーキを食べ、さらに和音の数学の幾何の問題を一つ解いてあげた。

佐藤正志は和音の机の横に置かれた編みかけのセーターを見つけた。彼にプレゼントされたものと同じデザインだが、毛糸の色はグレーで、サイズも彼のものより少し小さめだった。

そのため佐藤正志は、自分が受け取ったマフラーは和音が誰かに注文したものかもしれないが、セーターは間違いなく和音が手編みしたものだと分かった。

そう考えると、佐藤正志の口元は思わず少し上がった。

しかし結局、佐藤正志は和音から「お兄ちゃん」という一言も聞くことはできなかった。

甘くて可愛らしい声で呼ばれる「お兄ちゃん」を、どれくらい聞いていないだろうか。

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佐藤正志が階下に降りて、両親に再会した時、数日後に和音を引き取りに来る件について話を切り出した。

佐藤おばあさんは即座に断った。「何を考えているの?好きな時に連れてきて、好きな時に連れて帰るって?とんでもない!どこか涼しいところに行ってなさい!おりこが来たからには、ここに住むのよ。私たち二人の老いぼれでも、おりこ一人くらいは十分に面倒を見られるわ!」

佐藤正志は祖父の方を見るしかなかった。

「私を見ないでくれ」今回は佐藤おじいさんも妻の味方をした。「この古い家も寂しいものだ。せっかくおりこが来てくれて私の相手をしてくれているんだ。手放すわけにはいかないよ!」

佐藤おじいさんは佐藤おばあさんほど露骨な表現はしなかったが、孫娘への愛情は疑う余地がなかった。

佐藤おばあさんは続けた。「私たち二人で相談して決めたの。私たちの不動産の八割はおりこに残すわ。この古い家も含めてよ。残りの二割はあなたたち八人で分けなさい。この二人の老いぼれが贔屓してるって文句を言わないでちょうだい。あなたたちは全員男の子なんだから!」

佐藤おじいさんと佐藤おばあさんは既に引退し、企業は完全に息子たちに任せていた。その後、佐藤家企業の株式も三人の息子に渡ることになっていた。