佐藤正志は古い屋敷を出た後、車の中で同徳私立病院の院長である小田百蔵に電話をかけた。
小田百蔵は院長であり、同時に佐藤直樹の主治医でもあった。
電話が繋がるとすぐに、佐藤正志は本題に入った。「用事があるんだ。今いる場所を教えてくれ。」
電話の向こう側の小田百蔵は驚いた。「誠也若様、今は夜の十時半ですよ!もう仕事は終わっています!」
「だから場所を聞いているんだ。」
病院にいるなら、佐藤正志はそのまま病院に向かうところだった。
「いえ、誠也若様、私はもう五十歳を過ぎていて、若い方々とは違います。特別な事情がない限り、この時間には寝るべきなんです!」
「では、これを特別な事情としよう。」
「……」
電話の向こうで寝る準備をしていた小田百蔵は泣きたい気持ちだった。
三十分後、小田百蔵の家。