第77章 凌を守る(2)

「何をそんなに慌てているの?」

奥野実里は藤田安広の後ろ襟をつかみ、180センチを超える男性を強引に引き戻した。

奥野実里は身長176センチで、一般的な男性よりも背が高かった。

体格は健康的で、今は白衣を着ているため分かりづらいが、ジムでの彼女の姿を藤田安広は見たことがあり、自分では及ばないと感じていた。

「恵子姉、離してください。緊急事態なんです!」藤田安広は急いで説明した。

「どんな緊急事態?」藤田安広が本当に焦っている様子を見て、奥野実里はからかうのを止めた。

「新しく契約した子が困っているんです。すぐに助けに行かないと。」

「なんだって!何をぐずぐずしているの?男なんでしょう!」

奥野実里は二つ返事で、藤田安広を引っ張って外に出た。

研究所が苦労して獲得した天才少女が、契約初日に研究所の名義で論文を発表したのだ。

今、研究所の古参メンバーたちは、権威ある機関に提出された素晴らしい論文の興奮冷めやらず、落ち着かない様子だった。

こんな逸材に、誰かが困らせようとしているなんて?

奥野実里が最初に許さない!

藤田安広も無実だった。彼女に引き止められて遅れたのに、今度はぐずぐずしていると言われる。

「あの、恵子姉、警備員も二人連れて行かないと。」

「何の警備員よ、私が一緒に行くだけで十分でしょう?」

「十分なのは分かってますが……」

奥野実里一人で警備員の一団に匹敵することは、藤田安広は全く疑っていなかった。

「大勢で行った方が威圧感が出るでしょう?」

「そうね!二人だけじゃなくて、一台分連れて行きましょう!ついでに車庫の防弾車も出しましょう!研究所の警備力の凄さを見せつけてやりましょう!」

彼らのレベルの研究所は、普通の小さな組織とは比べものにならない。

謙遜せずに言えば、大阪市全体で、誰が彼らの研究所の人間に対して無茶な真似をできるだろうか?

自分が病気にならない、大切な人が病気にならないという自信がない限り!

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佐藤和音は藤田安広にメッセージを送った後、携帯に別の人からのメッセージが届いた。

【ファズル先生、少し困っているようですね。こちらで片付けることができます。完璧な処理をお約束します。これを手付金とさせていただき、もちろん、ご希望であればもっと多くのことをお手伝いできます。】