佐藤和音は藤田安広たちに送ってもらうことを断り、何事もなかったかのように、佐藤おばあさんの車が学校の門に着いた時、静かに乗り込んだ。
この時、学校の門前にあった花や風船、横断幕はすでに奥野実里の命令で片付けられていた。
すべてが普段通りに見えた。
佐藤和音は意図的におばあさんにさっきの出来事を知られないようにしていた。
そのため、おばあさんも和音の様子から何か異常があったとは気付かなかった。
車が佐藤家の門前に着いた時、佐藤おばあさんと和音は佐藤隼人の姿を見かけた。
息を切らしており、まるで走ってきたかのように見えた。
佐藤おばあさんは急いで運転手に車を止めさせ、ドアを開けて尋ねた:
「隼人、どうしたの?どうして急に走ってきたの?」
今日は火曜日で、隼人は学校にいるはずだった。
「運転手に連れてきてもらったんです」おばあさんの質問に答えながら、隼人の視線は和音に向けられていた。
隼人はすでに栄光高校の門前で起きた出来事を知っていた。上杉望から連絡を受けていたのだ。
上杉望は、和音さんが悪質な不良に目をつけられたことを、隼人に知らせる必要があると考えていた。
これを隠していたら、隼人の信頼を完全に失うことになりかねないと思ったのだ。
上杉望が予想していなかったのは、隼人にメッセージを送った後、菊地秋次に連れ出されて、直接制裁を受けることになったことだった。
隼人は上杉望からのメッセージを受け取るとすぐに、急いで駆けつけようとした。
しかしその時はまだ授業が終わっていなかった。
最後の30分間、教室で座っていた隼人は針のむしろに座っているような気分だった。
妹に告白しようとした不良な男のことを考えると、隼人は腹が立った。
妹はまだ何歳なのか?恋愛をする年齢には全然達していない!
たとえ恋愛をする年齢になったとしても、こんな不良がつけ狙っていいような相手ではない!
一目で真っ当な人間ではないと分かるような奴とは、妹は距離を置かなければならない!
授業終了のチャイムが鳴るや否や、隼人は教室を飛び出した。
車に乗ると、隼人は運転手にすぐに佐藤家本邸へ向かうよう要求した。
最初は直接栄光高校に行くつもりだったが、途中で上杉望に状況を確認した時、すでに解決したと告げられた。